キミを描きたくて

「失礼します…って、先生いないじゃない」


とりあえず熱計って寝てなさい!
そう体温計を私に渡して、ベットに押し込む。

熱のせいでぼんやりする視界が、私には幻想的に見えた。
…ぼやけた風景画も、ありなのかな…



「…38.6度、熱ね。とりあえず冷えピタ貼るわよ」

「うん、ありがとう…美桜ちゃん」

「いいのよ。家族に連絡…はできないものね」



美桜ちゃんは、私の家族のことを、全てでは無いけれど知っている。
だからこそ、私は彼女を信頼している。

本当に、高校生活に、美桜ちゃんと絵があれば、私はなんだって我慢できるのだ。



「少し寝てなさい、先生に事情話してくるから。あと、帰りは真っ直ぐ帰りなさいよ」

「ふふ、美桜ちゃんにはお見通しだね…」

「当たり前でしょ。アトリエなんか行って悪化させたら、元も子もないんだから」



そう私のことを叱ってくれるのも、きっと彼女だけ。
美桜ちゃんは、かけがえのない存在だ。

美桜ちゃんの代わりなんて、私は見つけることは出来ないだろう。


そう心の中で美桜ちゃんへ愛を語りながら目をつぶると、直ぐに意識は落ちていった。