キミを描きたくて

アトリエに入って荷物を置くと、キャンバスにかけていた布を外す。

今日は着彩を始めよう。
失敗はできない。必ず完璧に。



「コーヒー、持ってきたよ」

「あ...ありがとうございます」

「お、もう色を付けるんだね」

「はい、早く作業してしまわないと終わらないので」



そういうと、隼人くんは目を伏せる。
少し俯きがちに、コーヒーをコトンと静かに置き、何も言わなくなる。

隼人くん?と声をかけると、悲しそうな顔を上げた。



「ずっとここに...」

「...どうしたんですか、隼人くん」

「ここに...ここにいればいい」

「隼人くん?」

「......ここにいれば、依茉ちゃんがその彼氏とやらに、悩まされることも無くなるよ」

「...隼人くん」

「ずっと、ずっとここにさえいてくれれば」



様子のおかしい隼人くんをとりあえず座らせて、作業の準備を進める。

絵の具をパレットに乗せる頃には、だいぶ落ち着いていた。



「...さ、始めましょうか」

「前も言ったけど、隅々まで描いて。誤魔化さないで、ぼかさないで」