キミを描きたくて

「ついでにカウンセリングを始めようか」

「あぁ...はい」



アトリエに来ると必ずする、カウンセリング。

この時間が何気に好きだ。



「依茉ちゃん、最近はどう?眠れてる?」

「...どうでしょう、以前変わりなくですね」

「そうか...何か、やっぱり思い出したりする?」

「その...いつまで経っても、兄のことが頭に浮かぶんです」



兄は今留学中で、パリにいる。
...彼が留学に行ってから、もう5年が経った。



「...思い出すと、眠れなくなる?」

「まぁ、どうしても...一度考え始めると、数時間は考えてしまうんです」

「眠れないことによって、なにか生活に支障は?」

「特に、ですね。眠いのは寝ても寝なくても変わりありませんから」



僕もそうだよ、なんて笑ってくれて、少し場の空気が穏やかになる。

やはり彼は医者に向いている。

だって、こんなにも話すだけで私の心を解すことが出来るのだから。


中学生の頃から、隼人くんは兄のような存在だった。
...それはきっと、いつまで経っても変わらない。