キミを描きたくて

「こんにちは」

「あ、依茉ちゃん!久しぶりだね」


私が来たのは、とあるカフェ。
カフェと言っても特殊で、画家ばかり集まる。

画家ばかり集まるのは、このカフェをアトリエとして使うことが許可されているからだ。


「隼人くん、久しぶり」


そんなカフェのバイト、阿部隼人(アベハヤト)。
かなり仲の良い子。

...そして、私の憧れでもある。


「最近来ないから、絵辞めちゃったのかと思ったよ」

「やめないですよ、絵だけは」

「そっか。あのアトリエだけはずっと依茉ちゃんのために空けてるから、使ってね」


そう言って可愛い笑顔で鍵を手渡す。
人懐っこい笑みを浮かべる割には、実際、人懐っこくはない。

仲良くない子には冷たいし、基本淡々と業務を終わらせるような人だ。


「そうだ...久々にお話しようか、絵を書きながら」


コーヒーを持っていくからアトリエで待っててね、そう彼はキッチンに消えていく。


彼は大学生で、医学部だ。
将来精神科を目指しているらしく、よく私の話を聞いてくれる。


不安なこと、悩み、楽しかったこと、怖かったこと、辛かったこと...

彼は私が話す度に、嬉しそうな顔を浮かべてくれる。