紫月《花火が終わったら家行く》
簡潔な文章。許可を取るわけでもなく言い切り。
きっと彼は、私が誰と花火を見ているのかしっているはずだ。
…お兄ちゃんの話は、まだしようと思えない。
隼人くんには泣きつくように話してしまったけれど、紫月くんにはまだ言わない方がいい。
帰ってきてから、全て話を聞き出してから、改めて人間関係を整理しよう。
「大丈夫?彼氏くんから?」
「うん。今日夜家に来るって」
「…俺も、いっていい?」
突然の彼の提案に驚く。
いちご飴をかじる彼を見ると、その瞳はどこか遠くを見ていた。
「依茉ちゃんのこと、今日は独占できると思ってた」
「……そっか」
「だから話をつけに行く」
いいでしょ?なんて言う彼に、私はノーとは言えなかった。
どうでもいいと思った。どうとでもなると思った。
またグチャグチャになってしまえばそのグチャグチャをパテで塗りつぶせばいいから。
また、上書きしてしまえば何も怖くないから。
そうやって私は何度も何度も逃げ出してきた。
「今は何も返信しないで、知らないふりをしてて。まるで、僕たちが一緒にいるのは当たり前だったかのようにしてて」
そういう彼は、黒い笑みだった。
簡潔な文章。許可を取るわけでもなく言い切り。
きっと彼は、私が誰と花火を見ているのかしっているはずだ。
…お兄ちゃんの話は、まだしようと思えない。
隼人くんには泣きつくように話してしまったけれど、紫月くんにはまだ言わない方がいい。
帰ってきてから、全て話を聞き出してから、改めて人間関係を整理しよう。
「大丈夫?彼氏くんから?」
「うん。今日夜家に来るって」
「…俺も、いっていい?」
突然の彼の提案に驚く。
いちご飴をかじる彼を見ると、その瞳はどこか遠くを見ていた。
「依茉ちゃんのこと、今日は独占できると思ってた」
「……そっか」
「だから話をつけに行く」
いいでしょ?なんて言う彼に、私はノーとは言えなかった。
どうでもいいと思った。どうとでもなると思った。
またグチャグチャになってしまえばそのグチャグチャをパテで塗りつぶせばいいから。
また、上書きしてしまえば何も怖くないから。
そうやって私は何度も何度も逃げ出してきた。
「今は何も返信しないで、知らないふりをしてて。まるで、僕たちが一緒にいるのは当たり前だったかのようにしてて」
そういう彼は、黒い笑みだった。



