キミを描きたくて

私なんて所詮絵しか描けない塊でしかなく、頭の中はスケッチブックでいっぱいだ。

でも、でもそれでいいのだとも思う。
私は絵を描けていれば幸せだから。それが私の幸せとしたいから。


「…見に行こうかな、花火」


スマホをタップして返信する。
紫月くんには、断ったけれど。
隼人くんとなら、あの美しさを共有できるかもしれない。

それに、樹のことだってまだまだ話したい。不安要素でしかない。

前に隼人くんが利用していいと言ったから、遠慮なくカウンセラーとして利用する。

…それが、彼の望む利用じゃなくとも。


「誰かと見る花火なんて久しぶりだな」


昔はよく樹とベランダから見ていた。
キレイだねって、描いていた。

でも絵の方がもっとキレイだと、よく褒めてくれて。

ねえ樹。
あなたは、私と血が繋がっていないのに、どうして私のためにフランスに行ったの?


頭がぐるぐると回り出す。今日はもう寝てしまおう。
昨日泣きすぎたせいで目も頭も鼻も痛いし、ゆっくり休もう。

そう思うのに、体はスケッチブックを求めて、また開く。
そして、また描きだす。


「樹は…まだ絵、好きでいてくれてるかな」