キミを描きたくて

「何が話す義理も無いだよ、あんな悪魔の手紙を俺に渡して、あんな女と俺が結ばれると思った?」

「く、るし…ッ」

「苦しいに決まってる、でも俺の方が苦しいから。わかるでしょ?他の男に取られるくらいなら、このまま消えてしまえばいい」


紫月くんの涙が私の顔に落ちる。
だんだん視界がチカチカしてきて、もうダメだと目を瞑る。


「ねえ、愛してるよ依茉。だから、俺から離れようとしないでよ」


首元がスっと軽くなり、体に荒く酸素が広がる。
紫月くんは私に覆い被さると、ぎゅっと抱きしめた。

そのまま殺されれば、私は自由になれたのに。

抱きしめ返す余裕もあるわけなく、荒く息を繰り返す。


「ごめん、依茉」

「…なに、が」

「俺が愛してごめん」


ズッと鼻をすする彼。
机の上のティッシュに手を伸ばそうとしても、届きはしない。


「後で、あの手紙見せる。だから、だから今はこのままでいさせて、俺の依茉でいて」

「…離しても、逃がしてくれないのに」

「そうだよ、逃がさない。こんなに可愛くて愛おしい依茉を、俺は解放しようと思えない、だから」


ずっとここにいて。

そう耳元で泣くと、抱きしめる力が一層強くなる。
隼人くんがあの日抱きしめた力よりも、もっともっと強かった。