キミを描きたくて

「言い訳なんて、ないよ」

「ふうん、そう。…で、誰のところにいたの」

「そんなこと別に話す義理もないでしょ」


私の口は、私が思う以上に回る。
余計なことまで付け足して。

…でも、私は素直になっていいんだ。

もっと貪欲になって、もっと自分を優先して。

全部、隼人くんが教えてくれたこと。


「は?どういうこと?」

「…宮崎さんと歩いてるの、見たよ」

「誰それ」

「ラブレターの子。私が繋げたんだから、別に会ってようが別になんとも思いはしないよ」


どんどん、余計な言葉ばかり飛び出てくる。
言うべきじゃないことまで。

…名前すら知らないなんて、ありえないのに。


「でも…そんな人と、私はあの美しい花火を見れると思えない、それだけだよ」


そう言いきって靴を脱ぐ。
紫月くんを避けてリビングに入ると、勢いよくソファに突き飛ばされて、押し倒された。


「…依茉のくせに、随分言うじゃん」


そう言うと苛立ちを前面に出して、無理矢理唇を奪う。
その経験もなかった私には、初めてだった。


「俺言ったよね。逃がさないって」


私の首元に手をやると、思い切り体重をかけて、首を絞めてくる。
私はもう諦めて、もがくことすらしなかった。

殺されるのならば、それでいい。

目の前の男から、逃げられるのなら。

もう、それでいいとさえ思えるくらい、彼はとても綺麗に泣いていた。