キミを描きたくて

スっ、と鉛筆を握ると、頭が急にハッキリして、モードが切り替わったように手が動く。

ニコニコとした隼人くんを、すすっと大雑把に描く。

デッサンは大好きだ。
特に隼人くんは顔が整っているのもあり、描きがいがある。
黒髪のマッシュにピアス。高い鼻に、ふっくらとした頬。


「やっぱり、絵を描いてる時の依茉ちゃんは素敵だよ」

「……」

「きっといつか、依茉ちゃんの絵は大きな美術館に飾られることになるはずだよ」


大きな美術館や、個展。
それは私のいつかの夢で、叶うか分からない、とても大きな夢。

大好きな絵を、"早見依茉"が生きていた証として。

それは別に、生きているうちでも、死後でも構わない。


ゴッホやフェルメールは死後評価されたし、ピカソは生前も死後も評価され続けているが、フェルナン・コルモンは生前の評価は凄かったものの、今は名を知る人は少ない。

ゴッホは今では何億と言う取引がされているが、生前は絵1枚1000円ほどにしかならなかったという話もある。

今は努力が実らなくとも、何年、何十年、何百年後に、きっと私の絵は誰かに理解される日がくる。

そう思えば、俄然とやる気が出てくるものだ。