キミを描きたくて

ふふっ、と隼人くんが笑って、離れる。
また声を上げて笑い出したかと思うと、にこにこしながら言った。


「そうだよ、僕は臆病だから。依茉ちゃんが嫌がることをしてまで、手に入れようとは思えない」


でもね、と続ける。


「殺したいほど好きなのは変わりないよ。どんな依茉ちゃんでも、僕はいつまでも好きだって言えるよ」

「…ほら、やっぱり優しい」

「重いだけだよ。…大丈夫、痛くないようにするから」

「そんな問題じゃないけどなあ…」


彼の手を汚してまで、私はこの世界から逃げようとは思えない。
いつまでも綺麗なその指で、コーヒーを入れていて欲しいから。


「冗談だよ。ふふっ、依茉ちゃん、表情戻ってきてよかった」


そう言われて気がついてみれば涙は止まっていたし、口角だって上がっていた。
"笑わせる"。そう言った通り、彼は私を笑わせてくれた。

こんな束の間の幸せが、一生続いて欲しいとすら思う。

ああ、高望みだ。


「依茉ちゃん」

「どうしたの、隼人くん」

「また、僕を描いて」


ペンと紙を持ってくるよ、というと寝室へ行き、すぐにコピー用紙と鉛筆と鉛筆削り、消しゴムを持ってくる。


「僕を描いて、僕を忘れないで」