キミを描きたくて

「こ、ここです」

「へぇ。何階?」

「9階です」


12階建てのマンション。
オートロックで、お風呂とトイレは別々なところ。


「...今ここに一人で住んでるってこと?」

「はい、そうです。予定だと、今年の秋まで」

「へぇ...寂しくないの?」


僕だったら寂しくて死んじゃうな、なんて言う。そうですか、なんて明らかに興味が無い声が出た。

そりゃ、興味無いもん。仕方ない。


「明らかに興味無さそう...ま、そのくらいの方がいいか。下手に好きでいられても困るからね」


“好きでいられたら困る”。
どれだけモテれば、そんな言葉が出てくるのか。

モテない私にとっては、好意を向けられるだけ素晴らしいことだと思う。

この男が、単純に憎いと思った。

私はどれだけ頑張っても愛されないのに、この男は息をするだけで愛され、敬われる。

...好きでいるななんて、高望みにも程がある。

好きでいてくれる人がいるだけ、マシだろう。


「ご、ご飯、今なにか作りますね」

「料理できるんだ」

「...一人、ですからね」


適当に冷蔵庫のものを漁る。
しばらく買い物に行っていなかったせいで、入っていたものを覚えていない。

適当に腐る直前の野菜や、冷凍してある肉などを取り出す。

適当に炒めて、米と味噌汁を用意することにした。