キミを描きたくて

「依茉ちゃんが傷つくの、僕はどうしても見ていられないし、見たくもないんだよ」


困ったように眉を下げる。

隼人くんはいつだって私のやることを全否定はしないが、自分の思ったことは必ず言う。

完璧に止めるんじゃなくて、止めるようにあくまで促すだけ。

その優しさが、私にはとても痛かった。


「…隼人くんの言う通り、最初からあの人と私は似合うことなんてないんだと思う」


私はさっき、あの二人を見て何を思った?

私の代わりなんて無限にいる。
ずっと、ずっとそう思っている。

彼は私の代わりになるものを見つけただけ。
更にそれは、私がつなげたものなだけ。

私が彼らを繋げたのに、私にとやかく言う権利は無い。

あの時、手紙を渡すことを了承したのは、間違いなく私だ。


「育ちも違えば、私はそもそも人と関わることなんて向いてない。美味しいコーヒーとケーキ、それから絵とお兄ちゃんがいれば、私はそれ以上高望みなんてしない」


涙がほろりと落ちる。
心の底からそう思うのに、なにか裏切られたような感覚がするのは何故だろう。

全て、私がしたことなのに、何故。


「依茉ちゃん、自分に嘘はつかなくていいよ」


ふと、優しく隼人くんが私の頭を撫でた。