キミを描きたくて

アトリエに入ると、真っ先にアルコールマーカーが目に付いた。
そうだ、新しいこれで、描いてみよう。


「アルコールマーカー?買ったの?」

「…紫月くんが」

「紫月?…ああ、彼氏?」

「紫月くんが、必要ならなんでも買ってあげるって…」


机に、B5サイズの画用紙を載せ、下に下敷きを引く。
私の今の色は…_____

下書きなんて要らない。
そんなものなくていい。
下書きなんていらないから、とりあえず何か描きたい。

夢中に、まるで絵に貪りつくかのように、マーカーを走らせる。

アルコールなので乾くのは早いが、ぼかしだってできる。

絵の具の用意すらできそうにない今の心情に、とてもマッチしていた。


「…依茉ちゃん」

「どうしたの、隼人くん」

「僕は、今後依茉ちゃんとお兄さんがどうなっても、僕だけは味方だから」


そう優しく頭を撫でてくれる。
隼人くんは、とても優しい。

だから、私には"見合わない"。

その優しさも、愛情も、友情も。
私には勿体ないのだ。


だから、隼人くんにも言えないことを作ろうと思う。


ねえ、隼人くん。
私、"にげたい"。