キミを描きたくて

「依茉ちゃん、そんなに目擦ったら腫れるよ」

「はや、はやとくん…もうだめ、わたし…」

「うんうん、落ち着こう。どうしたの?」


隼人くんは私にコーヒーカップを握らせ、飲ませる。
苦い、でも甘くてミルクの味がする。

その味に正気を取り戻す。


「今日、お父さん来たんだよね?」

「……お兄ちゃんが、帰ってくる、って」

「え?」


落ち着きを取り戻した私は、先程の父の言葉を復唱するかのように隼人くんに伝える。

兄が戻ってきて嬉しい。でも、私と兄は全くの他人。
かつ、この事実を兄はずっと知っていた。

…そりゃそうだ、私と兄は4つ離れている。
物心着いた頃に来た妹だ。

なのに、なのにあんなに樹は、私を妹として見てくれた。


「そっか…それで落ち着かなくて、飛び出してきたんだね」

「どうしよう。夏休みが終わる頃って」

「まだひと月もあるよ。大丈夫。少し心落ち着けようね」


絵でも描く?なんて、彼はアトリエに誘導してくれる。
…ああ、絵でも描いてやろう。
この気持ちを全部、キャンパスに押し付けて、筆だってボロボロにしてやる。