キミを描きたくて

「どんな顔も何も、普通にしてればいい。今まで通り絵を続けていればいいじゃないか」

「いや、ええ」

「ああ、そうか。今まで一人分の仕送りだったもんな、安心しろ、二人分出す」

「そういうことじゃなくて…!」


"兄が帰ってくる"。

そこに喜びは確実にあるが、なにか、得体の知れない思いもある。
…とりあえず、帰ってくるまでにスケッチブックは燃やさなければならない。

それと、コンクールで兄への愛を書いたら金賞だったことも。


「ああ、そういえば…依茉が中学の時にコンクールに出した作品、樹のことなんだってな」

「それ、本人に言った…?」

「大喜びだったぞ。」

「ほんっっっとにばか!!なんてことしてくれるの!?」


私の中で立てていた戦略が全てバラバラ。
慌てふためく私を前に、父はまた真剣な顔をする。


「それと、これは…樹も知っているが、依茉が知らない話だ」


そう言われたのは、あまりにも信じられない事実。
まるで頭が鈍器で殴られたように。

嘘…なわけない。
こんな真剣な顔するお父さんが、嘘だよ、なんて笑うはずもない。

ましてや、そんな嘘をつく必要すらないのだ。