キミを描きたくて

それからの父の話は、とても長かった。

要約すると、私と家を離れた兄が憎くて、"やれるもんならやってみろ"と、母が兄に言いつけたことから始まった。

帰ってくるまで、妹との関わりを一切禁じるとして。

これは父の推測だが、私が兄が居ないことを寂しがり、さらに不信感を抱かないために、記憶喪失になったと聞かせることで、兄を諦めさせようとした。

…全部、母のせいだったのだ。

私のこの不安も何もかも。



「それで…とりあえずお兄ちゃんのことは解決として、どうして離婚?」

「もう見てられないんだよ。ボクは、依茉と樹さえ幸せでいてくれればいい。依茉だって、好きに絵を描いていたいだろう?」

「いや、まあ…そうだけど」

「それで、母さんと離婚したから樹も帰国。もう近くの大学に編入が決まっているから…___」

「いや待ってよ。今更、今更お兄ちゃんとどんな顔して会えって言うの?」


問題はそこだった。
毎日兄のいない喪失感をスケッチブックになすり付けていた私。

そんなことが知られてしまえば、きっと兄は気持ち悪がるだろう。