キミを描きたくて

「ううう〜...美桜ちゃん、帰りたくない」

「会長の機嫌損ねたらやばいんだから早く行きなさい!!」


美桜ちゃんがそう私に言う。
美桜に、そこまで言われたら...。

話は明日聞くから、そう言って美桜ちゃんは私を美術室から追い出した。

帰るしかない。

...遅いだの、あーだこーだ言われるんだろうな。


「遅い」

「す、すみません...」


案の定、不機嫌そうな会長がそう言う。
はぁぁあ...今日は最悪な一日だった。


「何かあったのかと思った」

「い、いえ、キャンバスをどこで乾かすかに戸惑ってて」

「そう。ほら、帰るよ」


そういうと、会長が私の手を掴む。
その手は暖かくて大きい。

...やっぱり、男の子なんだ。

これだけ顔は整ってるしスラっとした体型だけど、ちゃんとした男子なんだなぁ...


「家、どっち方面?」

「あ、北ですね」

「...そう」

「会長は?」

「俺?西だよ」


そうなんですね、なんて返す。
どうしよう、話題がない。


「てか、いつもこんな時間に一人で帰ってるの?」


こんな時間、と言いつつも、時間は19時過ぎ。
大して遅くない時間だ。


「はい、美術部のみんなはチャリ通で...かと言って、ほかに友達がいなくって」

「家族、心配しないの?」

「...兄が1人だけいるんですが、留学行ってて一人なんです」


そう言うと、へぇ、と声を出した。