キミを描きたくて

「てか、ハヤトクンってそんな有名なの?」

「…基本的に、冷たいらしい、ですよ」

「ふーん。"生きてるうちに"、ってどういうこと?」

「ああー…多分、兄のことを言ってるんだと思います」


死んでるかも分からないけれど。
確かに私が兄のことを絵にしだしたのは、兄と会えなくなってすぐのことだった。

でもそれは本人がいないので、抽象画や、はっきりしないボンヤリな記憶のデッサン。


「依茉は、死んだら俺の絵書いてくれんの」

「私に描かれたくないっていったの、そっちでしょ」

「ハヤトクンは、特別なんだ?」


"特別"。
…確かに、私は彼が居なくなってから、彼の絵を描ける気はしない。

紫月くんのことは、まだ描ける気がするのに…
また、ぼんやりした記憶のデッサンくらいはするだろう。

とくべつ、なんて四文字には収まりきらない感情が、きっと隼人くんにはある。


「…そんなんじゃ、ないですよ」

「ならいいけど。ま、今更好きな人出来ましたーとか言っても逃がさないからね」

「隼人くんは…特別じゃ、無いです」


それより、もっと上の何か。
…格別、とでも言っておこう。