キミを描きたくて

じゃあ作業中に話しかけないで、そう言葉を出そうとした時だった。


「依茉!」

「...あ、美桜ちゃん」

「そろそろ部長が鍵を閉めるって...って、か、かか、会長」

「こんにちは。依茉のお友達?」

「は、ははは、はははいっ!!!」

「......依茉に悪い虫がついてたら、すぐ教えてね」

「も、もちろんですっ!!」


早く片付けてきてね、そう美桜ちゃんは足早に言ってしまった。


「美術部なんだ」

「...まぁ、嫌々でしたけど」

「そうなの?」

「美術部のみんなは全体的に、非抽象を描きたがるんです。でも私は、抽象画の方が好きだから」

「ふぅん。なんか意外。イラストとか好きそう」

「嫌いじゃありませんが、非抽象だと現実味があって、写真のような絵が好きなんです」


イラストは線の省略が多いが、私はあまり好きではない。

写真ですか?と言うくらいに、リアルな絵を。


「片付けたらすぐ昇降口来て。待ってるから」