キミを描きたくて

そうか、今日はもう夏休みだから、何もしなくたって許されるんだ。

ポスン、と音を立ててソファーに座る。
会長が、キッチンでお茶を入れているのが見える。


「…ありがとう、ございます」

「別に。…てか、敬語やめなよ」

「え?」

「付き合ってるのに"会長"とか敬語とか、疲れるでしょ」


"少しだけ心を開いて"。
そう言っているように感じた。

思えば私は隼人くんにだって敬語を使うことの方が多い。


「わ、わかった」

「ん。何してたの?」

「え?ああ…絵を描いてたら疲れちゃって」


スケッチブックを閉じて、胸元で抱きしめる。
もうすぐ、このスケッチブックも終わる。

また、新しいの買わなきゃな…


「今日何する?」

「え?」

「夏休みじゃん。なんかしたいことないの?」


買い物とかー、なんてスマホをいじりながらそう聞く。

去年の夏はずっと受験に備えて勉強だったし、その前もずっとこの部屋で絵を…。

…たまに思い立てばカフェに行って、ケーキという名のご飯を食べるくらい。


「うーん…」


そうだ、アトリエに連れていこう。
そう思ったが、考え直す。

隼人くんと会長…紫月くんの仲は、良くなることはきっとない。


「ショッピングモール、とか」


ポツリ、そう提案してみた。