キミを描きたくて

光の着いたリビングを見る。
柵にのしかかって、ため息を着く。


…描き掛けの樹の顔。
私の今までのスケッチブックに、何度樹を描いただろう?

樹本人を描かなくとも…私は、樹への思いばかり描いていた。抽象画として。

思い出せば、隼人くんとの出会いもそうだった。
あのころは寂しさしかなくて、それしか描けなくて…

でも、隼人くんが、"兄への気持ちを素直に"とアドバイスしてくれて、私は明るい絵を描けた。
その絵で、コンクールでも金賞。

……金は、いつかは錆びてしまう。

秋にある、コンクール。
私はまた名前を載せることができるだろうか?


何を、何を描くかすら定まらないのに。


「…お兄ちゃん」


手紙、まだ待ってるよ。
写真も、早くみたいな。


空に広がる星にそう願う。
…手紙も写真も、そんなものなくたって本当はいい。

帰ってくる。そう約束したじゃないか。

私一人を置いて。
この小さな檻の中で、ずっと。


…いつだって、この檻から出ることはできる。
それでも出ないのは、何故?





「依茉」


そう呼ばれてハッとする。
気づけばもう空は薄明るくて、とてつもなく長い時間居たのかと気づく。


「依茉、中入りなよ」


会長の目は、確かに私を捉えていた。