キミを描きたくて

会長と、また一緒の布団で眠る。
そこまで大きくないベッド。少し手を伸ばせば届く距離。

私は、今日1日を思い出して頭を抱えていた。

…2人から、告白された。

1人は殺したいくらい好きだと、もうひとりは逃がしてやれないと。

違う、違う、私はこんな人生を描いていたわけじゃない。


素敵な家族がいて、趣味もあって…友達もそこそこ居て。時には笑ったり泣いたりして。

こんな、こんな目にあうはずじゃない。
私にとって、樹が全てなんだ。

樹が好きだと言うから絵を描くし、病気になったら許さないと言うからご飯だって食べる。

樹が、あの忌々しい家から出してくれると言うから着いてきた。こんなはずじゃない。


_______黒い笑みを思い出す。

あの日夢に見た、黒い笑み。
樹は、私にどんな感情を抱いていたのだろうか?

愛?幸福?…いや、絶対そんな生ぬるいものじゃない。


「…描かなきゃ」


また描かなきゃ、忘れてしまう。樹の顔を、描けなくなってしまう。

会長がぐっすり寝息を立てているのを確認して、そっと布団から立ち上がり、リビングへ行く。

思い出さなきゃ、あの日の兄を。