The previous night of the world revolution6~T.D.~

凄い。

とにかく、凄いという感想しか出てこない。

「で、その後すぐ、『職場はマフィアです』って言い始めてさー。もう、びっくりしちゃうよね〜」

「…はい…」

いきなり、実は自分の夫が皇太子だったと聞かされた直後に。

職業はマフィアの幹部だと宣言され。

それで、「びっくりしちゃうよね」の一言で済ませてしまう、あなたにもびっくりしちゃったよ、俺は。

人によっては、本当に結婚して良いのか、考え直すレベル。

それを笑って流すとは、この人、ただ者ではない。

しかも。

「何で王子様やめちゃったの?って聞いたら、マフィアの幹部の…なんか、死神さん?って人に憧れて、その人の弟子になりたかったからなんだって」

この動機。

こんな動機で王位継承権を放棄するとは。

「それで、マフィアに一人で乗り込んでいったらしいよ。武器一つ持って」

狂気の沙汰。

「よ…よく生きてましたね…」

「ねぇ〜!凄いよね〜」

よく生きて帰れたものだと思う。あの『青薔薇連合会』に、単身乗り込むなんて。

あと、それを笑って話せるあなたも、相当頭おかし、いや…肝が据わってると思う。

箱庭帝国に革命を起こそう、なんて考えた過去の自分も、相当だと思っていたが。

世の中、上には上がいるものだと実感する。

さすがは、あのルレイア殿の弟子…。

「はー…。ルーチェス君、早く迎えに来ないかなー…」

「…」

…なんて。

夫との馴れ初め話をする辺り。

セカイ殿が、どれだけルーチェス殿を恋しく思っているか、察しがつくというものだ。

こればかりは、何と言って良いのか分からない。

残念ながら俺は、ルティス帝国に内政干渉する訳にはいかない。

革命時に散々迷惑をかけておいて、今更何を、と言われそうだが。

しかし、それはそれ。

もし『帝国の光』とかいう組織が、『青薔薇委員会』に接触してきたとしたら、それはきっぱり断るつもりではいる。

でも今のところ、その兆候も見られないし…。

正直、今ルティス帝国国内がどうなっているのかは、俺にもよく分からないのだ。

「すぐに戻ってきますよ」と励ましてあげたいが。

でも、その言葉には、何の根拠もない。

根拠もないことを言って、逆に彼女を傷つけるような真似はしたくなかった。

故に。

「…大丈夫ですよ。必ず、迎えに来てくれます。いつかは分からなくても…。約束したんですから、きっと守ってくれますよ」

俺は、そう言って励ますしかなかった。

「うん…そうだよね」

セカイ殿は、少し笑顔を見せた。

「ルーチェス君、昔からやることが突飛だからな〜!何なら、今にも『迎えに来ました』とか言って、窓から入ってきてもおかしくないかも!」

「はは…。それはさすがに…」

と、

二人で、「冗談」を言っていた、そのとき。

…外から、聞き覚えのないヘリコプターの飛行音が聞こえてきた。