The previous night of the world revolution6~T.D.~

もっと群衆が冷静だったなら。

「何で故障中のエレベーターに乗ったの?」とか。

「武器を見たのに、何で警察に連絡しなかったの?」とか。

「そもそも、君みたいな党員いたっけ?」とか。

色々正論が出てくるのだろうが。
 
如何せん、騙されていた怒りに燃える彼らに、そんな冷静さを求めるのが間違いというものである。

「ずっと私達を騙していたんですね!?」

「この詐欺師め!今まで払った金を返せ!」

あー、言われてる言われてる。

『帝国の光』のリーダーが、詐欺師呼ばわりされるとは。

実際詐欺師みたいなものだし?

散々人を騙し、欺き続けた罰だ。

…ん?スパイやってた僕らが言うのはおかしいか。

まぁ、それはそれ。

とにかく、充分責められてくれ。

「効果抜群ね…。まさかここまで噂が広がるなんて」

やいのやいの責められているヒイラを見て、感嘆するシュノさん。

いっそ爽快な気分になりますよね。

「人間は噂が大好きですからね。それも、はっきりしない噂が一番好き」

『表党』の党員達の反乱。

これは、僕とシュノさんの企てである。

計画を立てたのはアイズ総長だけど。

僕達は『表党』に入って、あちこちで噂を流し続けた。

噂と言うか、真実なんだけど。

曰く、ヒイラは『帝国の光』入党時に、党員を表と裏に分けているとか。

使える者は裏、使えない者は表にして、裏の党員だけを重宝し。

表の人間は、精々金集めと宣伝用にしか使われない。

重要な秘密も信頼も、『表党』の党員には望むべくもない。

自分達は、謂わば捨て駒。

笑顔で自分達に接してくれているのに、その実は、便利な貯金箱くらいにしか思われていない。

これは紛れもなく、『表党』の人々にとっては、党首の裏切りに他ならない。

ましてや、平等主義を謳う『帝国の光』では、タブー中のタブーだ。

そして今、ずっと『表党』の人々を騙し続けてきた…そのツケが、回ってきている。

ざまぁないですね。

見てる分にはかなり面白いので、このまましばらく責められ続けて欲しい。

「どういうことなんですか!説明してください!」

「俺達を金ヅルとしか思ってなかったってことか!?」

「ルティス帝国の未来の為だとか言って、私達を騙してたんですね!」

騙される方も悪いと思いますけどね、僕は。

人間は、なかなか長期的には考えられない生き物なんだから。

ルティス帝国の未来なんて、そんなこと考えて頭を悩ませるのは。

一部の偉い人だけ、帝国騎士団とか、王族とかに任せておけば良いんですよ。

僕は任されるの嫌でしたけどね。