The previous night of the world revolution6~T.D.~

…さて。

自宅に帰った俺は、ルーシッドと共に、それぞれ持ち帰ってきた論文集を読み耽った。
 
そこには、『ルティス帝国を考える会』のメンバーの、思いの丈が記されていた。

これが、彼らの考える理想のルティス帝国、らしい。

へぇ。

…笑止。

「…だって。ボロクソ言われてますよあなた達」

「…そうみたいですね」

論文の中身は、小学生の作文並みの出来だった。

語彙力は、確かにルティス帝国総合大学の学生らしいが。

言ってることは、小学生並み。 

「こいつら、馬鹿の一つ覚えですよ。王制廃止!貴族制度廃止!富を国民に分配しろ!不平等不平等!言ってることこれだけですもんね」

「ま、まぁ…。要約するとそうですね」

要約しなくてもそうだろうがよ。

こんな下らない文字の羅列を、論文と呼んで良いなんて、なんとまぁ甘いサークルであることか。

それでも…。

「これがあのサークルの『方針』で、おまけにこの考えに賛同する人間が、少なくともこれだけいるってことです」

「…はい」

何が、『ルティス帝国を考える会』だ。

これじゃあ、『ルティス帝国を共産主義にする会』じゃないか。

論文集に載っている論文は、全て共産主義的考えに基づいている。

その上で、女王や帝国騎士団になんか恨みでもあるのか?と思うほどに、

まぁ、徹底的に叩きまくっている。

…アホくさ。

「そういう趣旨の論文だけを、敢えてまとめているのか…」

「まぁその可能性はありますけど」

中には、王制賛成派の学生もいるのかもしれない。

しかし。

「あのエリミアとかいう、バストサイズが残念な会長の『方針』のもとに活動してたら、そういう学生はやりにくくて仕方ないでしょうよ」

「ばっ…バストサイズは関係ないんじゃ…」

「あいつ超残念ですよ。見栄張ってBカップのブラつけてましたが、あれはAですね。全く、年齢サバ読むおばさんもいれば、バストサイズに見栄を張る会長…。皆、もっと自分に素直に生きれば良いのに」

何人なりとも、相手が女であれば。

俺の目は誤魔化せない。

前にも言ったが、俺が女のスリーサイズを間違えるようなことがあったら、ご先祖様に申し訳ないからな。

「あなたは…自分に素直に生き過ぎなのでは…?」

ルーシッドが、何かをボソリと呟いた。

「…………は?今何か言いました?」

「あっ、いえ!とんでもないです!」

そう、それで良い。

この家にいる限り、俺を怒らせない方が身の為だぞ。

「で、話を戻すとして」

この、腐れ論文の話だったな。

「本当は王制賛成派のサークルメンバーもいるのか、それともそういうメンバーの論文はわざと載せないで、冊子にしているのか…でしたね。そもそもサークルは『ルティス帝国を考える会』なんですから、王制賛成派がいてもおかしくないのでは…」

甘い。

甘いねぇ、ルーシッド坊っちゃん。

「それはないでしょう」

「え…。何でですか?さっき、可能性はあるって…」

「そういう学生も、確かに一人二人はいたでしょう。でも今頃そんな学生は、あまりに居づらくて退会してるか、幽霊部員と化してるでしょうよ」

だって、『ルティス帝国を考える会』とか言いながら。

結局のところこのサークルは、『ルティス帝国を共産主義にする会』なのだから。

少なくとも、共産主義的考えのメンバーの方が圧倒的多数なのは、この論文集を見ているだけで分かる。

何より、あのエリミア(バストサイズ詐称)とかいう、生粋の王制反対派が、会長を務めている時点で。

もうお察しってもんだ。

そして、サークル紹介の為に、こんな共産主義論文集を配布する辺り。

「私達はこういう考えの集まりなので、そういうメンバーだけが入ってきてくださいよ」と、念を押しているようなもの。

「あなたは相当居づらいでしょうね、ふふ」

「う…。笑いながら言わないでくだない…」

そりゃ笑いたくもなるだろうよ。

このサークルに入ったが最後、俺とルーシッドは、正反対の待遇を受けることになるのだから。