バールレン邸には、アシミムのお忍び用の車で向かった。
道中、周囲を警戒しまくっていると。
ルシードが、
「…狙撃手は呼ばなくて良いのか」
と、余計なお世話なことを聞いてきた。
「何だ?」
「子飼いの狙撃手を連れてきているんだろう?はぐれることになるぞ」
「余計なお世話だ」
確かにアリューシャの精神年齢は、良いとこ五歳児の子供だが。
それでも、飼っているつもりはない。
それに。
「お前達に、気を許したとでも思ってるのか?」
俺が、常にアリューシャと一定の距離を取っているのは。
俺に何かあったとき、アリューシャだけは逃げられるようにする為だ。
「主は、貴殿らに危害を加えるつもりはないと言った」
「そんな口約束を信じるとでも?」
「…」
「お前達には、常に疑うに値する『前科』がある。信じた方が馬鹿を見る」
特に、お前らは俺のルレイアを、とんでもない目に遭わせてくれたんだからな。
あのときのことを思えば、俺が今、お前達を撃ち殺していないだけ、俺の心が広いのだと思え。
…とはいえ。
今回の件では、恐らくアシミムは、本当に関与していないのだろう。
ルレイアのような観察眼がなくても、それくらいは俺にも分かる。
アシミムはルティス帝国と…と言うか、ルレイアと…敵対するつもりはない。
だから、バールレンとかいう貴族の人間をルティス帝国に遣わせ、『光の灯台』を造らせよう…という陰謀は、なかったということになる。
少なくとも、アシミムにそのつもりはない。
だが。
アシミムにそのつもりがなくても、他の人物まで同じかと聞かれれば、それは否だ。
嫌疑をかける相手が、アシミムから、そのバールレンとかいう貴族に変わっただけのことだ。
「…アシミム」
「…何ですの?」
「シェルドニア貴族達は、『白亜の塔』の秘密が、ルティス帝国にバレている…ということを知ってるのか?」
もし、知っているのだとしたら。
自国の大切な秘密が、他国にバレていることを知っているのだとしたら。
『白亜の塔』の建設に携わってきたバールレン家は、きっと危機感を覚えるだろう。
そして、『白亜の塔』の秘密を守る為に、独断でルティス帝国に潜入した…という可能性も考えられる。
ルレイアの恐ろしさを、実際に目にしていないバールレン家の人間は。
ルティス帝国に手を出すという行為が、どれほど無謀であるか、知らないだろうからな。
しかし。
「知りませんわ。そんなことを貴族達に話したら…」
「自分達の悪事が他国にバレたなんて知れたら、あんたが無能な女王であることも、貴族達にバレるもんな。言えるはずがない」
「…」
アシミムは、怯んだような表情を見せたが。
ルシードは、いかにも不快そうな視線を向けてきた。
勝手に睨んでろ。
道中、周囲を警戒しまくっていると。
ルシードが、
「…狙撃手は呼ばなくて良いのか」
と、余計なお世話なことを聞いてきた。
「何だ?」
「子飼いの狙撃手を連れてきているんだろう?はぐれることになるぞ」
「余計なお世話だ」
確かにアリューシャの精神年齢は、良いとこ五歳児の子供だが。
それでも、飼っているつもりはない。
それに。
「お前達に、気を許したとでも思ってるのか?」
俺が、常にアリューシャと一定の距離を取っているのは。
俺に何かあったとき、アリューシャだけは逃げられるようにする為だ。
「主は、貴殿らに危害を加えるつもりはないと言った」
「そんな口約束を信じるとでも?」
「…」
「お前達には、常に疑うに値する『前科』がある。信じた方が馬鹿を見る」
特に、お前らは俺のルレイアを、とんでもない目に遭わせてくれたんだからな。
あのときのことを思えば、俺が今、お前達を撃ち殺していないだけ、俺の心が広いのだと思え。
…とはいえ。
今回の件では、恐らくアシミムは、本当に関与していないのだろう。
ルレイアのような観察眼がなくても、それくらいは俺にも分かる。
アシミムはルティス帝国と…と言うか、ルレイアと…敵対するつもりはない。
だから、バールレンとかいう貴族の人間をルティス帝国に遣わせ、『光の灯台』を造らせよう…という陰謀は、なかったということになる。
少なくとも、アシミムにそのつもりはない。
だが。
アシミムにそのつもりがなくても、他の人物まで同じかと聞かれれば、それは否だ。
嫌疑をかける相手が、アシミムから、そのバールレンとかいう貴族に変わっただけのことだ。
「…アシミム」
「…何ですの?」
「シェルドニア貴族達は、『白亜の塔』の秘密が、ルティス帝国にバレている…ということを知ってるのか?」
もし、知っているのだとしたら。
自国の大切な秘密が、他国にバレていることを知っているのだとしたら。
『白亜の塔』の建設に携わってきたバールレン家は、きっと危機感を覚えるだろう。
そして、『白亜の塔』の秘密を守る為に、独断でルティス帝国に潜入した…という可能性も考えられる。
ルレイアの恐ろしさを、実際に目にしていないバールレン家の人間は。
ルティス帝国に手を出すという行為が、どれほど無謀であるか、知らないだろうからな。
しかし。
「知りませんわ。そんなことを貴族達に話したら…」
「自分達の悪事が他国にバレたなんて知れたら、あんたが無能な女王であることも、貴族達にバレるもんな。言えるはずがない」
「…」
アシミムは、怯んだような表情を見せたが。
ルシードは、いかにも不快そうな視線を向けてきた。
勝手に睨んでろ。


