「…アリューシャ。話は聞いてるな?」
俺は、声をひそめてアリューシャに連絡を取った。
『おう。若ハゲの話だろ?』
そうだけど。でもそうじゃない。
「これからバールレンとやらの屋敷に向かう。携帯で俺の位置を辿って、可能な限り、お前も近くまで移動してくれ」
『りょ。つっても、こちとら移動手段ねーから、遅く…おっ』
お?
『丁度良いところに、ママチャリあるじゃん。ちょっとあれパクって、ルル公に追いつくわ』
お前って奴は。
だが、今回は目を瞑るしかない。
幸い、シェルドニア人は『白亜の塔』のお陰で、犯罪行為に寛容だからな。
置いていたママチャリがなくなっていても…多分、そんなに怒らないだろう。
いや、借りパクは犯罪だけれども。
今は、ルティス帝国存亡の危機と言っても良い状況なのだ。
借りパクくらいは、大目に見てくれ。
…いや、借りパクも犯罪だけどな?
ごめんな、持ち主。
「動かせるのか?鍵とか掛かってたら…」
いくら、犯罪行為に疎いシェルドニア人と言えども。
チャリに鍵くらいは…かけているのでは?
『だいじょぶだいじょぶ。ゴキブリ時代、よく盗んだチャリンコで走り出してたから。あのときに比べれば、これは立派なチャリだ』
あ、そう…。
『しかも、鍵かかってねぇぞこれ。家の中も、人いないみたいだし。パクり放題じゃん』
おい。
今、聞き捨てならないことを聞いたぞ。
てっきり、路肩に停めている自転車かと思ったら。
人の家の敷地内に侵入して、パクろうとしてるのかよ。
パクり方が凶悪。
そして、シェルドニア人よ。
お前達は、もう少し自分の家のセキュリティを見直した方が良い。
ルティス帝国では、到底有り得ない不用心さだな。
しかし、今回ばかりは見逃して欲しい。
こちらは、命が懸かっているのだ。
「…仕方ない。借りさせてもらえ」
『りょ』
「あと、無理に狙撃ポイントを探す必要はないぞ。くれぐれも、危険なことはするな」
既に、アシミムへの脅しは充分に効いている。
王宮は、もとから位置が分かっていたから、狙撃ポイントを用意するのも楽だったが。
これから向かうバールレン邸は、初見の場所だ。
周囲に、上手いこと狙撃に向いている場所があれば良いが。
そうでないなら、無理をすることはない。
アリューシャに何かあったら、俺はアイズに顔向け出来ない。
『まぁ、ボチボチ探してみるよ。良いポイントが見つかったら連絡するわ』
「…分かった。くれぐれも気をつけろ」
『りょ〜』
…返事が軽いから、イマイチ心配が拭えないが。
今は、これ以上の意思疎通は行えなかった。
「こちらに」
「…あぁ」
用意が整ったらしいルシードに呼ばれ。
俺は、件のバールレン邸に向かった。
俺は、声をひそめてアリューシャに連絡を取った。
『おう。若ハゲの話だろ?』
そうだけど。でもそうじゃない。
「これからバールレンとやらの屋敷に向かう。携帯で俺の位置を辿って、可能な限り、お前も近くまで移動してくれ」
『りょ。つっても、こちとら移動手段ねーから、遅く…おっ』
お?
『丁度良いところに、ママチャリあるじゃん。ちょっとあれパクって、ルル公に追いつくわ』
お前って奴は。
だが、今回は目を瞑るしかない。
幸い、シェルドニア人は『白亜の塔』のお陰で、犯罪行為に寛容だからな。
置いていたママチャリがなくなっていても…多分、そんなに怒らないだろう。
いや、借りパクは犯罪だけれども。
今は、ルティス帝国存亡の危機と言っても良い状況なのだ。
借りパクくらいは、大目に見てくれ。
…いや、借りパクも犯罪だけどな?
ごめんな、持ち主。
「動かせるのか?鍵とか掛かってたら…」
いくら、犯罪行為に疎いシェルドニア人と言えども。
チャリに鍵くらいは…かけているのでは?
『だいじょぶだいじょぶ。ゴキブリ時代、よく盗んだチャリンコで走り出してたから。あのときに比べれば、これは立派なチャリだ』
あ、そう…。
『しかも、鍵かかってねぇぞこれ。家の中も、人いないみたいだし。パクり放題じゃん』
おい。
今、聞き捨てならないことを聞いたぞ。
てっきり、路肩に停めている自転車かと思ったら。
人の家の敷地内に侵入して、パクろうとしてるのかよ。
パクり方が凶悪。
そして、シェルドニア人よ。
お前達は、もう少し自分の家のセキュリティを見直した方が良い。
ルティス帝国では、到底有り得ない不用心さだな。
しかし、今回ばかりは見逃して欲しい。
こちらは、命が懸かっているのだ。
「…仕方ない。借りさせてもらえ」
『りょ』
「あと、無理に狙撃ポイントを探す必要はないぞ。くれぐれも、危険なことはするな」
既に、アシミムへの脅しは充分に効いている。
王宮は、もとから位置が分かっていたから、狙撃ポイントを用意するのも楽だったが。
これから向かうバールレン邸は、初見の場所だ。
周囲に、上手いこと狙撃に向いている場所があれば良いが。
そうでないなら、無理をすることはない。
アリューシャに何かあったら、俺はアイズに顔向け出来ない。
『まぁ、ボチボチ探してみるよ。良いポイントが見つかったら連絡するわ』
「…分かった。くれぐれも気をつけろ」
『りょ〜』
…返事が軽いから、イマイチ心配が拭えないが。
今は、これ以上の意思疎通は行えなかった。
「こちらに」
「…あぁ」
用意が整ったらしいルシードに呼ばれ。
俺は、件のバールレン邸に向かった。


