…とにかく。
「その、サシャ・バールレンが関わっているのは、紛れもない事実なんだ。それだけは…」
「え?」
は?
アシミムは、きょとんとして俺を見つめた。
…何か、おかしなことでも言ったか?
「サシャ・バールレン…?どなたですの?」
「は?」
「わたくしの知っているバールレン卿のお名前は、テナイ・バールレン卿ですわ」
「…!?」
誰だ、それ。
「いや、でもあいつはサシャ・バールレンだって…」
「…存じ上げませんわ。わたくしの知っているバールレン卿は、テナイ・バールレン卿ですもの」
「…」
…偽名を使ってるってことか?
ルティス帝国にいるときは、カツラを外して、サシャという偽名を使い。
シェルドニア王国にいるときは、カツラをつけて、本名であるテナイという名前を使っている…。
いや…しかし、ルティス帝国とシェルドニア王国を、そう度々行き来することは不可能のはず。
シェルドニア貴族の当主が、ルティス帝国に入り浸る訳にはいかないはず。
じゃあ、やっぱりどちらかが影武者…?
…分からない。
すると。
「…主よ、横から口を挟ませて頂きますが」
アシミムを守るように、傍らに侍っていたルシードが、声を上げた。
「何ですの?ルシード」
「私の記憶が正しければ…確かテナイ・バールレン卿には、弟君がいらっしゃるのではなかったでしょうか」
「!」
弟…だと?
「本当ですの?ルシード。わたくしは、お会いした記憶はありませんわ」
「は…。私も、直接お話したことはありません。しかし…主がバールレン卿の邸宅で、テナイ卿と会談しているとき、姿をお見かけしたことがあります」
それを、もっと早く言え。
「では…では、その方が、サシャ・バールレン卿ですの?」
「確信がある訳ではございませんが…。可能性はあるかと」
「ルシード。そいつ、ハゲてたか?」
「…そこまでは、記憶にない」
そうか。
まぁ、そうだろうな。
ルレイア辺りなら、そういう第一印象と言うか…他人を見た目で判断して、勝手なあだ名をつけるから、覚えていたかもしれないが。
アシミムの、「縦ロール」呼ばわりしかり。
ルチカの、「年齢サバ読みおばさん」呼ばわりしかり。
…あれは悪い癖だと思っていたが、案外こういうときは、役に立つのかもな。
肝心のルレイアが、今この場にいないのが悔やまれるが。
…ならば。
「その、バールレン卿とやらの屋敷に、案内しろ。本人に確認を取る」
「…今すぐに、ですの?」
「当たり前だ。言っとくが、お前はまだ容疑者だからな。お前もついてこい」
この機に乗じて、トンズラされてしまう訳にはいかないからな。
テナイとかいう奴に確認を取る為にも、アシミムは必要だ。
女王様だろうが何だろうが、関係ない。ついてきてもらう。
「主を一人で行かせる訳にはいかない。俺も同行する」
と、すかさず同行を希望するルシード。
「勝手にしろ」
お前がいようといまいと、アシミムさえいればそれで良い。
それより。
「その、サシャ・バールレンが関わっているのは、紛れもない事実なんだ。それだけは…」
「え?」
は?
アシミムは、きょとんとして俺を見つめた。
…何か、おかしなことでも言ったか?
「サシャ・バールレン…?どなたですの?」
「は?」
「わたくしの知っているバールレン卿のお名前は、テナイ・バールレン卿ですわ」
「…!?」
誰だ、それ。
「いや、でもあいつはサシャ・バールレンだって…」
「…存じ上げませんわ。わたくしの知っているバールレン卿は、テナイ・バールレン卿ですもの」
「…」
…偽名を使ってるってことか?
ルティス帝国にいるときは、カツラを外して、サシャという偽名を使い。
シェルドニア王国にいるときは、カツラをつけて、本名であるテナイという名前を使っている…。
いや…しかし、ルティス帝国とシェルドニア王国を、そう度々行き来することは不可能のはず。
シェルドニア貴族の当主が、ルティス帝国に入り浸る訳にはいかないはず。
じゃあ、やっぱりどちらかが影武者…?
…分からない。
すると。
「…主よ、横から口を挟ませて頂きますが」
アシミムを守るように、傍らに侍っていたルシードが、声を上げた。
「何ですの?ルシード」
「私の記憶が正しければ…確かテナイ・バールレン卿には、弟君がいらっしゃるのではなかったでしょうか」
「!」
弟…だと?
「本当ですの?ルシード。わたくしは、お会いした記憶はありませんわ」
「は…。私も、直接お話したことはありません。しかし…主がバールレン卿の邸宅で、テナイ卿と会談しているとき、姿をお見かけしたことがあります」
それを、もっと早く言え。
「では…では、その方が、サシャ・バールレン卿ですの?」
「確信がある訳ではございませんが…。可能性はあるかと」
「ルシード。そいつ、ハゲてたか?」
「…そこまでは、記憶にない」
そうか。
まぁ、そうだろうな。
ルレイア辺りなら、そういう第一印象と言うか…他人を見た目で判断して、勝手なあだ名をつけるから、覚えていたかもしれないが。
アシミムの、「縦ロール」呼ばわりしかり。
ルチカの、「年齢サバ読みおばさん」呼ばわりしかり。
…あれは悪い癖だと思っていたが、案外こういうときは、役に立つのかもな。
肝心のルレイアが、今この場にいないのが悔やまれるが。
…ならば。
「その、バールレン卿とやらの屋敷に、案内しろ。本人に確認を取る」
「…今すぐに、ですの?」
「当たり前だ。言っとくが、お前はまだ容疑者だからな。お前もついてこい」
この機に乗じて、トンズラされてしまう訳にはいかないからな。
テナイとかいう奴に確認を取る為にも、アシミムは必要だ。
女王様だろうが何だろうが、関係ない。ついてきてもらう。
「主を一人で行かせる訳にはいかない。俺も同行する」
と、すかさず同行を希望するルシード。
「勝手にしろ」
お前がいようといまいと、アシミムさえいればそれで良い。
それより。


