The previous night of the world revolution6~T.D.~

ルリシヤからの情報によると。

サシャ・バールレンは、『帝国の光』の本拠地であるビルの、秘密の地下室で。

そこに籠もって、『光の灯台』なる『白亜の塔』の亜種を研究をしている。

でも、目の前にいるアシミムは、つい先日、バールレン卿に会ったと言う。

…アシミムが嘘をついている?

いや、そんな風にはとても…。

それに、ここまで脅されているアシミムが、今更サシャ・バールレンを庇う必要はないはず。

なら、考えられるとしたら…。

…影武者、とか?

ルティス帝国にいるバールレンか、シェルドニア王国にいるバールレンの、どちらかが偽者。

俺は、自分の目で奴を見たことがないから、どんな容姿をしているのかは知らないが…。

…でも、そういえば。

ここに来る前、ルレイアが『帝国の光』に潜入し、無事『光の灯台』の開発チームに選ばれたことを、俺達に知らせてきたとき。

暗号文を使って、こんな風に報告してきた。

「無事、薄ら若ハゲチームに入りました」とか何とか。

あいつの毒舌はいつものことだが。

それで、「あぁ、その博士って奴、若ハゲなのか…」と思った。

そのときは、凄くどうでも良いことだと思ったことだが…。

もしかしてこれって、凄く大事な情報なのでは?

「まさかそんな、バールレン卿が…。信じられませんわ。あの方が、『白亜の塔』の秘密を外に漏らすだなんて…」

相変わらず、アシミムは狼狽していた。

お前が誰を信じようと、誰を疑おうと、そんなことはどうでも良い。

大事なのは、事実だけだ。

故に。

「…アシミム。一つ質問する」

…とても、気は進まないが。

「…何ですの?」

「そのバールレン卿っていうのは…若ハゲなのか?」

「…」

…アシミム、ぽかん。

馬鹿馬鹿しい質問だと思ったか?

俺も思ってる。

でも、大事な質問でもある。

『ぶふっ』

インカムから、アリューシャが噴き出す声が聞こえたが。
 
こっちは真面目なんだよ。お前も真面目に見張ってろ。

俺だって、好き好んでこんな低俗な質問をしてる訳じゃないんだよ。

だが、サシャ・バールレンを見たことがない俺にとって。

彼の特徴を表すには、ルレイアの毒舌に頼るしかないのだ。

他に特徴があるなら、そっちを聞いてるよ。

「そ、そう言われましても…」

「…こっちは真面目に聞いてるんだよ。真面目に答えろ」

「…べ、別段…禿頭(とくとう)という訳ではないように見えますわ」

「…気を遣ってんじゃないよな?」

「…えぇ…」

インカムから、アリューシャの低い笑い声がずっと聞こえてくる。

笑い事じゃねぇんだよ。

なら、影武者じゃないのか…。…いや、普段カツラ被ってる可能性もあるよな…。

…何で俺、こんな下らない考察してんの?

ルレイアもこの場にいたら、大爆笑だったろうな。

とにかく、特徴がハゲってだけじゃ、大した確定情報にはならない。

どうやって確かめたものか…。