The previous night of the world revolution6~T.D.~

…10分ほど、その場で待っていると。

ルシードの指示により、その場に集まっていたシェルドニア兵は、蜘蛛の子を散らしたように立ち去った。

そして。

シェルドニア警備兵と入れ替わるようにして。
 
豪奢なドレスを纏い、自慢の縦ロールを短く切って。

険しい顔をした女…シェルドニア王国女王、アシミム・ヘールシュミット…が、俺の前に現れた。

「…久し振りだな」

「…えぇ。あなたとは、随分久しいですわね」

お前が、俺達を騙し。

ルレイアを洗脳し、利用し、俺を殺させようとした、

あの時以来だな。

「…っ」

あの地獄のような、『ホワイト・ドリーム号』での記憶が蘇った。

あのときの、ルレイアの苦痛に満ちた顔。

悪夢にうなされ、助けて、と手を伸ばしたときの、ルレイアの姿を。

思い出しただけで、俺は目の前の女を殺したくて堪らない気持ちを、懸命に抑えなければならなかった。

「…俺は今、お前のことを殺したくて仕方ない」

俺は、正直にアシミムにそう言った。

引き金を引くことに、躊躇いはない。

もしお前が、少しでも悪意を持ってルティス帝国を攻撃したのであれば。

最早、俺はお前を生かしておく理由はない。

「精々、言葉は慎重に選ぶんだな」

「…分かっていますわ」

それなら結構。

「…ルシードから、話は聞きましたわ。どうやら我が国は、ルティス帝国から酷く疑われているようですわね」

「…つまり、否定するんだな?自分達はルティス帝国を攻撃するつもりはないと?」

「えぇ。そんなつもりは、毛頭ありませんわ」

アシミムがそう言うと。

俺は、左手をスッ、と上げた。

瞬間。

「っ!!」
 
一発の弾丸が、アシミムの耳元を掠めた。

アシミムの短い髪の毛が、パラパラと床に落ちた。

言わずもがな、アリューシャの狙撃だ。

ほんの僅か、一センチでも横にズレていれば。

今頃、アシミムの頭から、血飛沫が舞っていたことだろう。

「貴様…!何のつもりだ!?」

危うく主を殺されかけたルシードが、刀を抜いた。

勝手にやってろ。

「今のはわざと外したんだ。保険だよ」

アリューシャが本気で狙ったなら、外す訳がないだろうが。

今のは、威嚇射撃だ。

とはいえ、アリューシャの手元が僅かでも狂っていたら、アシミムはあの世行きだったかもな。

さすが、際どいところを狙えと言ったら、本当にめちゃくちゃ際どいところを、的確に狙いやがる。

こんなスナイパーに睨まれているのだから、迂闊なことは言えないだろうな。

ご愁傷様だ。

「保険だと…?」

「お前が、俺を騙そうと適当なことを言ったら、俺はすぐにお前達を敵とみなす。それを踏まえて話せ」

「…」

ルシードは、歯ぎしりせんばかりに俺を睨みつけた。

今の威嚇射撃で、充分に分かっただろう。

こちらは、今すぐにでもアシミムの命を奪えるんだよ。

何の為に、アリューシャを連れてきたと思ってる。

「もう一度聞いてやる、アシミム・ヘールシュミット。お前は、ルティス帝国に危害を加えるつもりか?」

「…」

アシミムは、耳元に飛んできた弾丸に臆しながらも。

一つ、深く深呼吸した。