The previous night of the world revolution6~T.D.~

相変わらずサングラスをかけて、変装するような格好をした俺達は。

ホテルを出てすぐ、「任務地」に向かった。

ここからは、アリューシャとは別行動である。

仕事用のインカムで、連絡を取り合うことになる。

俺は指定のポイントについて、アリューシャに連絡を取った。

「アリューシャ。着いたか?」

『おけおけ。警備ガバだねーこの建物。びっくりするくらいあっという間に侵入出来たよ』

だろうな。

シェルドニア王国は、世界で一番犯罪発生率が低い国。

これだけ聞けば、なんて治安の良い国なんだろうと思うが。

俺達は、この治安の良さのからくりを知っている。

これら全てが、『白亜の塔』によるものだと。

そして。

生まれたときから、『白亜の塔』の影響下にあり、反抗したり犯罪を犯すことを知らない国民達は。

良くも悪くも、危機感というものを知らない。

国民全体の気質が穏やか過ぎるせいで、「まさか悪いことを企む人がいるはずがない」という空気が蔓延している。

だから、俺達はそこに付け入らせてもらう。

『そっちの様子は〜…っと…。おーおー。女王様が住むお城だってのに、警備は門番二人だけかよ。しょぼっ』

「あぁ。それはここからも見えてるよ」

まず、一般人である俺が、王宮の近くにこんなに接近出来るのがおかしい。

ルティス帝国の王宮だったら、まずここまで近づくにも一苦労だ。

それに比べ、シェルドニア王国の王宮は、今俺の目と鼻の先にあるも同然。

警備が手薄なのも、「王宮に手出しする国民がいるはずがない」と思い込んでいる証だ。

つい先日、王様が暗殺されたばかりで国が荒れたというのに、まるで何事もなかったかのように静かだ。

これも、全て『白亜の塔』の影響だ。

不自然に国王が変わろうと、国民は何の疑いも持たず、新しい国王を無邪気に讃える。

「警備はたかが二人だ。俺が…」

と、言いかけると。

『まぁ待て待て。ルル公は奇襲係なんだから。ここは分担していこうぜ』

「分担?」

『門番二人と、門のセキュリティはアリューシャがぶっ壊す。あと、門から建物までにあるカメラと…あれは自動迎撃マシンガンだな。あれもぶっ壊すよ』

…さすがアリューシャ。

スナイパーの「目」は、前線にいる俺なんかより、ずっと視野が広い。

「奴らも、一応襲撃の備えはしてるんだな」

『お粗末過ぎて笑えてくるけどな。大体、こんなベストポジションで王宮を狙える位置に、お誂え向きの建物がある時点でお察しだろ』

全くだ。

ルティス帝国王宮なら有り得ないな。

まぁ、それでもアリューシャは王宮の窓をぶち抜いていたが。

あれはアリューシャがチート過ぎるのだ。

「とはいえ、警戒は怠るな。位置がバレたら危ない。適宜移動しろよ」

『おいおい、スナイパーの基本をアリューシャに講釈か?』

「…そりゃそうか。悪かったよ」

俺が言うまでもなく、お前は誰より優秀なスナイパーだよ。

「よし、始めるぞ」

『あいよ』

と、言った瞬間。

アリューシャのライフルが、火を吹いた。