The previous night of the world revolution6~T.D.~

何だ、別に寝てる人を起こすくらい、なんてことないじゃないか、と。

思った、そこのお前。

さては、このアリューシャの寝穢さを知らないな?

まず、第一段階。

「…おい、起きろアリューシャ」

名前を呼んでみる。

「…zzz…」

当然、こんなことで起きるはずがない。

この程度でアリューシャが起きたら、むしろ「大丈夫か?眠れなかったのか?」と逆に心配になるレベル。

次、第二段階。

「起きろアリューシャ!」

肩を揺さぶってみる。

大抵の人間なら、これで起きる。

しかし、この歴戦の勇者は。

「…zzz…」

まぁ、この程度で起きるなら、俺も毎回苦労してない。

仕方ないので、第三段階。

携帯のアラームを、「ジリリリリリ!!」と爆音で流してみる。

もしかしたら、隣の部屋まで聞こえているかもしれない爆音である。

隣の人、起こしちゃったらごめんな。

と、俺は隣人の睡眠事情まで気にしているというのに。

目の前のアリューシャは。

「…zzz…」

それがどうしたとばかりに、眠り続ける。

人によっては、もう眠っているのではなく、死んでいるのではないかと疑うレベルに到達している。

じゃあ次、第四段階。

「…起きろって言ってるだろ、馬鹿アリューシャ!」

後頭部を、まぁまぁの勢いでひっぱたいてみる。

普通の人なら、「いった!何するんだ!」と怒るくらいの威力。

しかし。

歴戦の勇者は、そんなことでは目覚めない。

「…zzz…」

まだまだぐっすり、夢の中。

こうなってくると、もうそろそろ、諦めがつく。

起こすのではなく、自然に起きてくるのを待とう、と。

確かに、ここでいくらアリューシャを起こそうとしても、無駄な努力だ。

頭から水をぶっかけようが、耳元でフライパンをガンガン鳴らそうが、アリューシャが起きることは決してない。

ならもういっそ、そのまま放っておいて、自然の成り行きに任せる方が、余程時間を有効的に使えると言うものだ。

しかし。

今日の任務には、アリューシャが不可欠。

いつまでも放っておいて、時間を無為に過ごす訳にはいかないのだ。

ましてや、この洗脳国家ではな。

一秒たりとも、長居したくはない。

よって、俺はアリューシャを起こすという、無謀とも言える選択をする。

と言うのも。

この居眠り勇者には、致命的な弱点がある。

アリューシャの、本当の保護者であるアイズから、きちんとその「方法」を教わっている。

そして俺は、昨晩の夕食バイキングで、ちゃんとシェフの方に聞いてきた。

故に、準備は万端。

ここまでしても起きないアリューシャを、一体どうやって起こすのかと言うと。

大声を出すのでも、ひっぱたくのでもない。

ただ一言、こう囁やけば良い。

「アリューシャ。今朝の朝食バイキング、ジェラートが出るんだってさ」

「え、マジ?」

あっさりと。

ぱっちりと。

アリューシャは目を開けて、むくっ、と起き上がった。

音を出しても駄目、叩いても殴っても水をかけても駄目。

しかし。

食べ物で釣ると、めちゃくちゃあっさり起きるのが、このへっぽこ歴戦の勇者、アリューシャなのである。