The previous night of the world revolution6~T.D.~

「あいつら悪さしようとしてるから、皆で止めるんだろ?せーばいするんだろ?アイ公のスペシャルな作戦で」

うん、それもそうなんだけど。

「そうじゃなくて…。『帝国の光』の思想については、お前も知ってるだろ?」

「…??」

駄目だ。分かってないじゃん。

こいつ、自分が何で、何と戦おうとしているのか、理解してないのか?

「簡単に言うとな…。『帝国の光』は、昔のお前みたいな、今日生きていくのも必死な人達を…」

「アリューシャみたいな、ゴキブリ族のこと?」

貧民街の人達に謝れよ。

何だ、その俗称は。

「とにかく、そういう貧しい人達を救って、平等な世の中を作ろうとしてるんだよ」

「ほーん…」

ほーんってお前…。

「もしあいつらの理想が叶ったら、アリューシャみたいな人達は、もう二度と生まれることはない。お前が味わった苦しみを、もう他の誰にも味わわせることがない国になるんだよ」

…まぁ。

本当にそうなるのかどうかは、疑問だ。

むしろ、慢性的に貧しい人々が増加するだけだと、ルレイアは言っていたが。

少なくとも『帝国の光』の理想は、そこにある。

特権階級をなくすことで、貧しい人々もなくそうとしている。

過去、アリューシャが味わった苦しみを、味わう人々は生まれなくなる。

それって、アリューシャにとっては…。

…凄く、意味のあることなんじゃないか?

「お前、本当は…皆が平等に暮らせる国に、憧れてるんじゃないか?」

「…ふ」

…ふ?

「ふへへへ!何言い出すかと思ったら、ルル公、カエルの卵パンで頭おかしくなったか?」

それを思い出させるなよ。

ってか。

「笑い事じゃねぇだろ。真面目な話だ」

「いや笑い事だろ?何言ってんだか。アリューシャは確かに、苦労して生きてきたけどさ。『自分と同じ苦しみを、他の誰かに味わわせたくない』なんて、殊勝なこと考えてねーよ」

「…そうなのか?」

「うん。むしろアリューシャは、ゴキブリアリューシャだったことに感謝してるんだから」

…感謝…。

「ゴキブリだったからしぶとく生きてこれたし、ゴキブリだったからシュスリーに会えたし、ゴキブリだったからアイ公に会えたし、『青薔薇連合会』に入って、今こうしてスナイパーとして役に立ってる。だろ?」

「それは…そうだけど」

シュスリー…ってのは誰?

「そりゃ昔はさぁ、『貴族の奴らめ』って憎んでたこともあるけど。ルレ公とかルリ公とか、王子様だったルー公だって、すげー窮屈そうな生き方してるのを見たらさ」

「…」

「どの身分に生まれても、それなりの苦労はあるんだなーって思うじゃん?」

「…そうだな」

俺も、そう思うよ。

貴族出身なら悠々自適だろう、と皮肉を言う奴らを、散々見てきたが。

そういう奴らは、漏れなくぶん殴りたくなる。

ルレイアや、ルリシヤが味わった苦しみを、少しでも味わわせてやりたくなる。

生まれに貴賤はあっても、それが必ずしも、幸福の尺度に直結するとは限らないのだ。