The previous night of the world revolution6~T.D.~

入国審査を滞りなく終わらせ。

ルティス帝国から持ってきた、荷物を受け取り。

空港を出るなり、「それ」は俺達の前に待ち構えていた。

ようこそ、と言わんばかりに。

思わず、アリューシャが口を開いた。

「ほげ…。あれがあれかよ。あの噂のあれ…。良い面構えしてやがるぜ、あのー…あれ」

「…『白亜の塔』な」

名前が出てこなかったんだな。言いたいことは分かるが。

思い出せないことを、全部「あれ」で済ませようとするな。

お年寄りじゃないんだから。

「そう、それだそれ。喉元まで出てきてたんだけどな」

「嘘つけ、全然覚えてなかっただろ。…それは良いから、サングラスかけろ」

「おうよ」

ルリシヤが考案した、変装用のマスクを被ってはいるものの。

今この段階で、俺達の顔がバレるのは不味い。

俺達はサングラスをかけて、空港を出て歩き出した。

「ヤベーな。アリューシャヤバくね?もう洗脳された?洗脳されてる?アリューシャ洗脳されてるんじゃね?」

戦々恐々としているアリューシャ。

シェルドニアの実態を知る俺達にとっては、気になるところだが。

「心配するな。数日滞在するくらいなら、洗脳の影響は受けない」

あれは、年単位でシェルドニア王国に住み続けた者だけがかかる。

じわじわと、侵食されていくように。

「それより、あまりきょろきょろするな。怪しまれるぞ」

「お、おう…。分かっちゃいるけど、本当にあれだな。あちこち、真っ白だな」

真っ当な感想だ。

異国人なら、誰でも思うだろう。

この国は、何もかもが真っ白だ。
 
コンクリ舗装された道路まで、ご丁寧に真っ白に塗られている。

家も店も、建物の全てが白い。

道行くシェルドニア人の服装も、頭の飾りから靴まで真っ白。

唯一白くないものと言えば、シェルドニア王国を覆う、青い空くらいのものだ。

とはいえ、今はもう夕暮れの時間なので、赤くなってきているが。

「成程なぁ…。こりゃ、ルレ公にはキツい国だな」

そうだろうな。

あいつはむしろ、周りの全てが黒いことで落ち着くタイプだからな。

だからって、他人と、しかも帝国騎士団の人間と同居するのに。

無断で勝手に、部屋の内装を真っ黒にするのは、どうかと思う。

ルーシッドは、もう少し抗議しても良かったと思うぞ。

まぁ、抗議したところで、聞く耳を持つルレイアではないが。

「何気に、アリューシャにもキツいぜ。アリューシャ、元ゴキブリだからさ。こんな真っ白なところにいたら、一瞬で見つかるじゃん」

「…何を言ってるんだ、お前は…」

誰がゴキブリだって?

「で、ルル公。アリューシャ達、これからどうすんの?」

「あのな…。機内で散々説明したろ?今日はもう動かない。近場に予約したホテルで、まずは一泊する。動くのは明日からだ」

「りょ!助かる〜!飛行機の中で、全然寝られなかったからさ〜!時差ボケで超眠いんだよね〜」

「…」

…お前、機内でめちゃくちゃ寝てなかった?

多分、いつもの日課の昼寝をしていないから、アリューシャの中では「全然寝られなかった」判定になっているのだろうが。

お前の一日の睡眠時間、どうなってんだよ。