The previous night of the world revolution6~T.D.~

「え?動いてる?」

「以前、党員の一人が間違えて、四階じゃなくて、五階のボタンを押しちゃって、五階で降りたらしいんですけど」

「五階って言うと…保険会社が入ってるフロアだよな」

「はい。慌ててもう一度エレベーターに乗ろうとして、ふと気づいたら、故障中のはずのエレベーターが、普通に点灯して、動いてるようだったって噂が」

「マジで?そんなの初めて聞いたよ」

僕も今、初めて言いましたからね。

「なんか、曰く付きのエレベーターだったりして…」

やっぱり、ホラー的な意味で受け取ってるみたいだが。

そういうのじゃないから。

「さぁ…。よく分かりませんけど、何だか怪しいですよね。ここのエレベーター」

エレベーターに対する疑念は、植え付けた。

次は。

「それにしても、『帝国の光』って、ちょっとケチだと思いません?」

僕は、冗談めかしてそう言った。

「どうしたんだよ?いきなり…」

「いや、各地で結構な献金を受けてるんだから、もっとちゃんとした本部を作れば良いのに。革命を起こそうとしている『帝国の光』の本拠地が、貸しビルのワンフロアだけって、なんか…言い方悪いですけど、ショボくないです?」

「…」

これが『裏党』の人間だったら、憤慨モノだったのだろうが。

『表党』で、しかも単調な仕事にうんざりしていた二人は、お互いに顔を見合わせ。

そして、ぷっと噴き出した。

「まぁ、言われてみれば、そうだな」

「色々金かかるんじゃね?あちこちで講演会とかしてるし」

そうですね。

粗悪な武器を買ったり、怪しい研究をする為に、いくらでもお金はかかるんでしょうけど。

「それにしたって、人数もそれなりに増えてるんですし、本部がワンフロアだけってのは、いくらなんでもみみっちいですよ」

「だよな。集会だって、人数入り切らなくなってるんだし…。せめてもうワンフロア…。二階は募集中なんだし、そこ借りるくらいして欲しいよな」

「二階と四階じゃ、不便だからじゃね?」

「ならいっそ、別の、もっと広いフロアがあるテナントを借りるとか?」

「いずれにしても、このビルの四階だけっていうのは、さすがにどうかと思いますよ」

これから、各地で名を轟かせようとしている革命組織が。

あまりにも、みみっち過ぎる。

同好会やサークルじゃないんだから。