俺は、そのとき。
特に、このエリアス・アッシュフォードという人間と、それほど深く付き合うつもりはなかった。
ランドエルスのときと違って、大学はもっと開放的だ。
特定の誰かと、特別親しくなる必要はない。
授業の中で、広く浅く、精々噂程度の世間話が出来る間柄であれば、それで良い。
しかし。
話が変わってきたのは、ようやく長い入学オリエンテーションが終わった後。
またしても、前の席に座っていたエリアスが、こう誘ってきたのである。
「なぁ、ルナニア」
早速呼び捨てかよ。
あまりこういうことを言いたくはないがな、俺は今回の潜入に当たって、現役で入学したように見せる為。
つまり、年相応の大学生に、若く見えるよう、例の特殊メイクを施してある。
まぁ、若干の童顔になってる訳だが。
実は、お前より歳上なんだからな。この野郎。
内心イラッとしながら、俺は「業務用」笑顔で答える。
「何ですか?」
「この後、大講義室で、新入生の為にサークル紹介があるって言ってたじゃん?」
あぁ、言ってたね。
つまんないオリエンテーションばっかで、ほとんど聞いてなかったが。
その部分は、ちゃんと聞いていた。
今回の俺のスパイ活動に、大変重要事項だからだ。
「一緒に行かね?」
この申し出は、正直厄介だった。
サークル紹介、つまり在学生による、サークル勧誘会だな。
これには、俺も参加するつもりだった。
俺は、俺達は…とあるサークルに入るつもりだったからだ。
だが、そこに一緒に誰かがついてくるのは、想定外だ。
俺は既に、入るサークルを決めている。
こいつが、何に興味を持って、どういうサークルに入りたいのか知らないが。
「なぁなぁ、一緒にサッカー同好会入らない?」とか誘われたら。
当然断るしかない訳で、そうすると若干ではあるが、俺と彼との間に亀裂が入る。
大袈裟かもしれないが、初対面で少しでも印象を悪くするというのは、スパイとしては避けたいことの一つだ。
サークル勧誘会に付き合うのは良いが、「同じサークルに入ろう」と誘わるのは、嫌だな。
または、俺が入ろうとしているサークルに対して、偏見や、差別的な目で見られるのも困る。
折角向こうから、友好的な関係を築こうとしてくれているのだ。
出来れば、それを利用したいところなのだが…。
どうしようか、と俺は少し考えた。
断るか、付き合うか…。
だが、俺に選択肢などなかった。
「良いですよ、俺も行こうと思ってたところだったんで」
「マジで?良かったー。じゃ一緒に行こうぜ」
考えてみれば。
ここで断ったって、結局お互い勧誘会には行く予定なのだから。
後で大講義室で鉢合わせたときの、気不味さを思えば。
最初から、一緒に行った方がマシだ。
想定外だが、想定外の事態も俺にとっては想定内。
伊達に、スパイ二度目ではない。
これしきのこと、俺の巧みな話術で乗り越えてみせる…と。
…意気込むまでもなかった。
特に、このエリアス・アッシュフォードという人間と、それほど深く付き合うつもりはなかった。
ランドエルスのときと違って、大学はもっと開放的だ。
特定の誰かと、特別親しくなる必要はない。
授業の中で、広く浅く、精々噂程度の世間話が出来る間柄であれば、それで良い。
しかし。
話が変わってきたのは、ようやく長い入学オリエンテーションが終わった後。
またしても、前の席に座っていたエリアスが、こう誘ってきたのである。
「なぁ、ルナニア」
早速呼び捨てかよ。
あまりこういうことを言いたくはないがな、俺は今回の潜入に当たって、現役で入学したように見せる為。
つまり、年相応の大学生に、若く見えるよう、例の特殊メイクを施してある。
まぁ、若干の童顔になってる訳だが。
実は、お前より歳上なんだからな。この野郎。
内心イラッとしながら、俺は「業務用」笑顔で答える。
「何ですか?」
「この後、大講義室で、新入生の為にサークル紹介があるって言ってたじゃん?」
あぁ、言ってたね。
つまんないオリエンテーションばっかで、ほとんど聞いてなかったが。
その部分は、ちゃんと聞いていた。
今回の俺のスパイ活動に、大変重要事項だからだ。
「一緒に行かね?」
この申し出は、正直厄介だった。
サークル紹介、つまり在学生による、サークル勧誘会だな。
これには、俺も参加するつもりだった。
俺は、俺達は…とあるサークルに入るつもりだったからだ。
だが、そこに一緒に誰かがついてくるのは、想定外だ。
俺は既に、入るサークルを決めている。
こいつが、何に興味を持って、どういうサークルに入りたいのか知らないが。
「なぁなぁ、一緒にサッカー同好会入らない?」とか誘われたら。
当然断るしかない訳で、そうすると若干ではあるが、俺と彼との間に亀裂が入る。
大袈裟かもしれないが、初対面で少しでも印象を悪くするというのは、スパイとしては避けたいことの一つだ。
サークル勧誘会に付き合うのは良いが、「同じサークルに入ろう」と誘わるのは、嫌だな。
または、俺が入ろうとしているサークルに対して、偏見や、差別的な目で見られるのも困る。
折角向こうから、友好的な関係を築こうとしてくれているのだ。
出来れば、それを利用したいところなのだが…。
どうしようか、と俺は少し考えた。
断るか、付き合うか…。
だが、俺に選択肢などなかった。
「良いですよ、俺も行こうと思ってたところだったんで」
「マジで?良かったー。じゃ一緒に行こうぜ」
考えてみれば。
ここで断ったって、結局お互い勧誘会には行く予定なのだから。
後で大講義室で鉢合わせたときの、気不味さを思えば。
最初から、一緒に行った方がマシだ。
想定外だが、想定外の事態も俺にとっては想定内。
伊達に、スパイ二度目ではない。
これしきのこと、俺の巧みな話術で乗り越えてみせる…と。
…意気込むまでもなかった。


