The previous night of the world revolution6~T.D.~

俺は、そのとき。

特に、このエリアス・アッシュフォードという人間と、それほど深く付き合うつもりはなかった。

ランドエルスのときと違って、大学はもっと開放的だ。

特定の誰かと、特別親しくなる必要はない。

授業の中で、広く浅く、精々噂程度の世間話が出来る間柄であれば、それで良い。

しかし。

話が変わってきたのは、ようやく長い入学オリエンテーションが終わった後。

またしても、前の席に座っていたエリアスが、こう誘ってきたのである。

「なぁ、ルナニア」

早速呼び捨てかよ。

あまりこういうことを言いたくはないがな、俺は今回の潜入に当たって、現役で入学したように見せる為。

つまり、年相応の大学生に、若く見えるよう、例の特殊メイクを施してある。

まぁ、若干の童顔になってる訳だが。

実は、お前より歳上なんだからな。この野郎。

内心イラッとしながら、俺は「業務用」笑顔で答える。

「何ですか?」

「この後、大講義室で、新入生の為にサークル紹介があるって言ってたじゃん?」

あぁ、言ってたね。

つまんないオリエンテーションばっかで、ほとんど聞いてなかったが。

その部分は、ちゃんと聞いていた。

今回の俺のスパイ活動に、大変重要事項だからだ。

「一緒に行かね?」

この申し出は、正直厄介だった。

サークル紹介、つまり在学生による、サークル勧誘会だな。

これには、俺も参加するつもりだった。

俺は、俺達は…とあるサークルに入るつもりだったからだ。

だが、そこに一緒に誰かがついてくるのは、想定外だ。

俺は既に、入るサークルを決めている。

こいつが、何に興味を持って、どういうサークルに入りたいのか知らないが。

「なぁなぁ、一緒にサッカー同好会入らない?」とか誘われたら。

当然断るしかない訳で、そうすると若干ではあるが、俺と彼との間に亀裂が入る。

大袈裟かもしれないが、初対面で少しでも印象を悪くするというのは、スパイとしては避けたいことの一つだ。

サークル勧誘会に付き合うのは良いが、「同じサークルに入ろう」と誘わるのは、嫌だな。

または、俺が入ろうとしているサークルに対して、偏見や、差別的な目で見られるのも困る。

折角向こうから、友好的な関係を築こうとしてくれているのだ。

出来れば、それを利用したいところなのだが…。

どうしようか、と俺は少し考えた。

断るか、付き合うか…。

だが、俺に選択肢などなかった。

「良いですよ、俺も行こうと思ってたところだったんで」

「マジで?良かったー。じゃ一緒に行こうぜ」

考えてみれば。

ここで断ったって、結局お互い勧誘会には行く予定なのだから。

後で大講義室で鉢合わせたときの、気不味さを思えば。

最初から、一緒に行った方がマシだ。

想定外だが、想定外の事態も俺にとっては想定内。 

伊達に、スパイ二度目ではない。

これしきのこと、俺の巧みな話術で乗り越えてみせる…と。




…意気込むまでもなかった。