「へぇー。入学試験は、筆記と面接…。げ、小論文まであるんですか?面倒ですねー」

あ、でも。

帝国騎士官学校みたいに、実技試験がある訳じゃないから。

そこは安心だな。

すると、そこに。

「何してるんだ、ルレイア」

「あ、ルルシー」

ルルシーが、しかめっ面で現れた。

俺がスパイ役として大学に潜入すると決まったときから、ルルシーは大抵いつも、不機嫌顔だ。

そんな顔もしゅきだけれど、やっぱり笑っててくれた方が嬉しいな〜。

「願書書いてるんですよ。受験の為に」

「あぁ…」

溜め息混じりに頷いて、俺の前に座るルルシー。

その手には、自販機で買ってきたらしい紅茶のペットボトルが二つ。

「飲むかと思って。自販機で悪いが」

「大丈夫ですよ。ありがとうございます」

丁度、喉乾いてたところなんだ。

俺達以心伝心って奴?

願書を書くのを一時中断して、ペットボトルの紅茶で、しばしティータイム。

あー癒やされる。

紅茶と言うより、ルルシーの存在で。

しかしこれからしばらく、こんな他愛ないティータイムも過ごせなくなるんだよなー。離れ離れになって…。

この、願書のせいで…。

と、改めて書きかけの願書を見つめ、ふと思った。

「しかし、面白いですねー」

「何がだよ?」

何がって。

「ルティス帝国総合大学と言うだけあって、この大学、色んな学部があるんですよ」

「色んな…?例えば?」

「ほら、医学部から経済学部、文学部とか」

「へぇ…。本当に幅広いんだな」

「でしょう?ルーシッドは、外国語学部にするそうですよ」

一応、その辺りの打ち合わせはしておいた。

学部が被っちゃうと、収集する情報に偏りが出るからな。

お互い違う学部にしておいて、それぞれで情報を集め、共有した方が良いとのことで。

俺は、ルーシッドとは別の学部を受験するつもりだ。

まぁ、帝国騎士官学校出で、帝国騎士団で四番隊隊長まで務めてる男が。

今更外国語なんて、笑止千万も良いところなのだが。

「ふーん…。それで、お前はどの学部にしたんだ?」

ルルシーは、片手に持っていた紅茶のペットボトルに口をつけながら、そう尋ねた。

「あ、はい。子ども教育学部です」

「ぶはっ!!」

「あ、願書濡れた」

ルルシーが噴き出した紅茶の飛沫で、折角書いた願書が。

書き直しかなぁ?これ。

いや、それより。