「さぁて、そんじゃ行きますかー」

「…あの」

「?何ですか」

出陣の支度を整え、いざ参らんと出掛けようとしたら。

ルーシッドが、おずおずと声をかけてきた。

何だよ。

「済みません…。こんなことになってしまって」

「あぁん?」

「この計画は、こちらから…帝国騎士団の方から持ちかけた話なのに、まさかこんなことになるなんて…。『青薔薇連合会』の皆さんを、危険な目に…」

…あぁ、そういう話ね。

自分が謝罪して、勝手に気持ち良くなってる奴。

「俺に謝罪してるつもりですか」

「…はい」

へぇ。

「謝罪の仕方ってのを知らないようですね、若造。…謝罪ってのは、床に這いつくばって、頭を床に擦りつけてするものなんですよ」

「…」

俺が、正しい謝罪の仕方を教えてやると。

ルーシッドは、無言で床に膝を着こうとした。

ので。

そんなルーシッドの額に、思いっきりデコピンを食らわせてやった。

「痛っ」

「アホですか。本当にやれとは言ってませんよ」

「…」

ルーシッドの土下座なんて見ても、何の腹の足しにもならないどころか。

面白みの欠片もありゃしない。

冗談だ、馬鹿。

大体、俺はそういう謝罪は嫌いだ。

「自己満足の謝罪なんて気持ち悪い。それ、あなたが勝手に謝って、勝手に許された気になってるだけでしょう」

「…それは…」

「危険な目に遭わせてごめんなさい?今更そんなことで謝るくらいなら、最初から巻き込まないで欲しかったですね」

「…面目次第もございません」

「ついでに言うと、あなたに謝られても、何の重みもない。あなたは命令されて従っただけで、決定したのは帝国騎士団の隊長達…ひいては、あのオルタンスでしょう」

今頃何をしているやら。

『青薔薇連合会』への「見返り」料を、算定し直してもらいたいものだ。

「土下座するなら、帝国騎士団一同でお願いしますよ。写真撮ってネットにばら撒いておきますから」

「…それは勘弁してください」

冗談だ、馬鹿めが。

「正直、こんなことになるとは、俺達にとっても想定外でしたからね。こればかりは、臨機応変に対応していくしかない」

「はい…」

「その上で、あなたは役割的に、全く役立たずになる訳ですが」

「…はい…」

「どうですか?今のお気持ちは?」

自分達は、ほぼ何の役にも立てず。

本来敵同士であるはずの『青薔薇連合会』に頭を下げ。

「どうか何とかしてください、お願いします」としか言えない。

随分と、惨めな気分だろうな?

「…愉快では、ないですね。とても」

ほう。

こういう質問に、素直に答えるところは、お前の長所だと思うぞ。