The previous night of the world revolution6~T.D.~

スパイなんだから、警戒を怠らないのは当然だが。

それでもこの男は、どうにも俺を不快にさせる。

その根底に何があるのか、上手く言葉に出来ないが…。

「どうかしたか?」

「帳簿、確認しようと思って。どうなってる?」

「こんな感じだ」

俺は、今しがたつけていた帳簿を、ヒイラに差し出した。

するとヒイラは、渋い顔を見せた。

まぁ、そうだろうな。

「相変わらず苦しいな…。こんなものか」

「仕方ない。下部組織から献金を受けているとはいえ、違法に武器を買うには、案外金がかかるからな」

実はこの帳簿、苦しくなるように、俺が小細工していたりもする。

何でも屋と化した俺は、武器の買い付けにも遣わされているので。

値切れそうな武器があっても、敢えて値切らず定価で買ったり。

明らかに欠陥がある武器を見せられても、指摘せずに、アホの振りしてそのまま購入したり。

『帝国の光』の財政を、少しでも圧迫してやろうという魂胆である。

あれだけ『ルティス帝国を考える会』が、決死の思いで万札を注ぎ込んでいるというのに。

こんな使い方をするのは、申し訳ないが。

君達も、怪しげな組織に貢ぐとろくなことにならないと学ぶ、良い機会だ。

人生の授業料だと思って、存分に痛い目を見てくれ。

それと。

「…ずっと気になってたんだが、同志ヒイラ」

「ん?」

「一覧の一番下にある、『革命開発費』っていうのは、何に使ってるんだ?」

ヒイラの親衛隊に入って、帳簿を任されるようになって。

広告費や講演会費や、武器購入費等々、一覧になって数字が並んでいるのを見せられたが。

一番下にある、その「革命開発費」っていうのが、いまいちよく分からない。

最初は、一種の宣伝費みたいなものかと思っていたが…。

それにしては、その項目だけ、異様に数字が大きい。

つまり『帝国の光』は、その「革命開発費」に、膨大な金を注ぎ込んでいるのである。

一体何なんだ、この費用は。

何に、金を使ってる?

ヒイラは、問いかけた俺をじっと見つめていた。

…まだ疑ってるのか?

「教えてくれても良いんじゃないか?俺達は同志だ。お互い、『帝国の光』に身命を捧げた身。隠し事をされると、俺も悲しいぞ」

「…いや、隠し事をするつもりはないんだよ」

どの口で言ってるんだ、お前。

今まで、散々隠し事に隠し事を重ねてきた癖に。

「それに、今日は君に、その話をしようと思って、探してたんだ」

「え?」

「帳簿の管理や武器の買い付けは、同志ルニキスは、もうしてもらわなくて良い」

何だと。

吹っ掛けられた粗悪品を、他人の財布で豪遊するの、

あれ、ちょっと快感だったのに。

それを取り上げられるというのか。ブラック企業『帝国の光』で、唯一と言って良い楽しみだったのに。

しかし、当然俺は、そんな表情はおくびにも出さず。

「そうか。俺は何をしたら良いんだ?」

「見せたいものがあるんだ。ちょっと来てくれないか」

また、そのパターンか。

お前の隠し事ボックスには、いくつ引き出しがあるんだ?