The previous night of the world revolution6~T.D.~

「そんなに緊張してます?」

「し、してないもん」

今のは…今のは、その、あれだよ。

いきなり背中をつつかれたから、びっくりしただけだもん。

全然、緊張なんてしてな、

「いや、さっきから大人の威厳、大人の威厳って、呪文のように繰り返してるんで。何かに取り憑かれたのかと思いまして」

「ふぇっ!?」

「はい?」

き…。

…聞かれてた?

「わ、私、それ、声に出てたっ!?」

「めちゃくちゃ出てましたけど…。え?無意識だったんですか?」

「〜っ!!」

「あ、やっぱり済みません」

大人の威厳どころか。

後輩に気を遣われる始末。

なんて情けない先輩だ。

「うぅぅ…」

「別に良いじゃないですか、緊張くらいしたって。恥ずかしいことではないのでは?」

「だ、だって…」

そりゃあルーチェスにとっては、全然恥ずかしいことじゃないかもしれないけど。

私にとっては、充分恥ずかしいことだもん。

たまには私だって、こう…ルレイアやアイズみたいに…。

…格好良い、『青薔薇連合会』の幹部としての威厳を見せたかった。

そりゃ私は、ルレイア達みたいな器じゃないのかもしれないけど…。

どよーん、と落ち込んでいると。

「それに、シュノさんの威厳なら、既に見せてもらってますよ」

「え?」

「僕が尻尾を巻いて逃げ出した『赤き星』、あれを潰したのは、紛れもなくあなたの功績でしょう?」

「それは…」

あのときは…とにかく必死で。

緊張とか、感じてる暇がなかったって言うか。

勢いで乗り切っちゃった感じ。

あ。ルレイアがいつも猪突猛進するときって、あんな気分なのかな?

「…私だけの功績じゃないよ。アイズも手伝ってくれたし…」

「とはいえ、自分の熾した火の不始末を、あなた達にさせてしまって申し訳ないです」

「…謝る必要なんてないよ」

ルーチェスは、充分よく頑張った。

お嫁さんを守らなきゃならなかったんだし。

彼はあの危険な状況下で、自分に出来る最大のことをしたのだ。

あれ以上はなかった。

それに。

「家族を守る、助けるのは、当たり前のことだもん。私は当たり前のことをしただけだから、ルーチェスが謝る必要なんてない」

「…家族…家族ですか」

「そうだよ」

『青薔薇連合会』の皆は、私の家族。

特に幹部の皆は、もう自分の兄弟と同じだと思ってる。

家族を助けるのに、理由が必要か?

「だったら…今回も、家族の為に頑張らなきゃいけませんね」

「うっ…うん、頑張る」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ」

「本当に大丈夫ですか?…大人の威厳の方は?」

「うぐっ…」

い、痛いところを突いてくる…けど。

最悪、大人の威厳なんてなくても良い。

家族を、守れるのなら。