The previous night of the world revolution6~T.D.~

エリアスの言うあいつ、が誰かは。

皆さん、とうにお分かりのことだろう?

いつだって皆の人気者である、俺とは違って。

いつだって皆の嫌われ者である、彼のことだ。

「…」

ルーシッドは、献金箱をジロッと見つめるだけで。

彼だけは、決して財布を取り出そうとはしなかった。

今回も、1円たりともくれてやるつもりはない、という態度を崩していない。

同調圧力に屈しない辺り、頑固だよなぁ。

そういう役割だから、仕方ないけど。

「あいつ、また募金する気ないのかよ」

と、ぼやくA。

「少しでも募金すれば良いのに。それがルティス帝国の為になるって分からないのか?」

と、憤るB。

「案外、金がないんじゃね?」

と、茶化すC。

金がないのに募金してるのはお前だろ。

借金までして貢いだ奴が威張るな。

「あいつ、何でここにいるんだろ。自分が明らかに浮いてるって、分からないのか?」

エリアスが、嫌悪感をあらわにして言った。

そりゃあ分かってるよ。そういう役割なんだから。

むしろ、浮いてないと困るのだ。

しかしエリアス達は、そんな事情は知らないので。

『ルティス帝国を考える会』一同、皆がルーシッドを白い目で見ていた。

二度目の献金に、小銭の一枚すら投入する気のない、全く参加しない彼のことを。

「これ以上輪を乱すなら、出ていって欲しいよな。正直」

エリアスが、禁句をボソッと口にしたのに。

「全くだよ」

「あいつなんて、いなくても良いよな」

「むしろ、いない方が良いだろ」

「そうだよ。その方が、俺達は一丸になれる」

咎めるどころか、エリアスの意見に賛成している始末。

落ちるところまで落ちたな、『ルティス帝国を考える会』も。

ただの段ボール箱で作った箱に、札束投入してる時点で…正気ではないけれど。