「ルレイア殿…その『オプスキュリテ』というのは…武器を斡旋する…」

「おっと、帝国騎士団としての仕事は、今はナシにしてもらいましょうか」

ルレイア殿が、俺を睨んで言った。

「お察しの通り、『オプスキュリテ』は闇の武器商人。ですが、彼らを告発すると言うなら、俺達は今すぐ、帝国騎士団とは手を切らせてもらいます」

「…!」

「あなたは何も聞かなかった。『オプスキュリテ』なんて知らない。この場にいる限り、マフィアも帝国騎士団も関係ない。俺達は同盟関係にあるんだから、俺達を害するような真似はしない方が良い」

…命が惜しければ、ですね。分かりました。

本来、そのような違法武器の斡旋は、帝国騎士団が取り締まるべき案件だ。

これが平時なら、俺もその役目を全うしていただろう。

だが今は、『青薔薇連合会』と協力関係にある。

『青薔薇連合会』が贔屓にしている武器商人に手を出せば、その時点で俺達の同盟関係は終わりだ。

それはそれ、これはこれなのだ。

だから俺は、ルレイア殿の言う通り、何も聞かなかったことにして、口を噤むことしか出来なかった。

「あなた方が知っておくべきなのは、ただ『帝国の光』の所有している武器は、『定価』で仕入れた良品ではなく、闇の流通から漏れて、馬鹿みたいな高値で取引されてる粗悪な武器だってことです。それ以外に、あなたが知る必要のあることはない」

「…分かりました」

つまり、『帝国の光』は。

『青薔薇連合会』がそうしているように、独自の良品武器を入手する経路を持っておらず。

仕方なく、古い上に、高値をつけられた粗悪な武器を買うしかないと。

その為に、あの献金…。

「じゃあ、『帝国の光』が、あれだけ募金を呼びかけているのは…」

「十中八九、武器を揃える為でしょうね」

「…」

…皮肉なものだ。

対話と相互理解によって政府を変える、と豪語するヒイラ・ディートハットの言葉を信じて、彼らは少なくない額を寄付しているのに。

その金の行き先が、革命の為の武器を揃えることに使われるとは…。

彼らが知ったら、何と思うのだろう。

そんなの聞いてない、と激昂するのだろうか。

それとも、それで政変が為されるなら構わない、と思うのだろうか。

「ともあれ、『ルティス帝国を考える会』が『帝国の光』の提携した今、俺も『帝国の光』の内部に入ったと言っても過言ではありません」

「…そうだな。その件で、ルリシヤには考えがあるそうだ」

「ほう、どんな考えを?」

「それは…まだ」

ルルシー殿は、言葉を濁すように言った。

しかし。

「成程。彼の考えることです。…きっと楽しいことになるんでしょうねぇ」

ルレイア殿は、いつもの不敵な笑みを浮かべた。

…つくづく、この人に勝てる気がしない。