私は、手元の書類をちらりと一瞥し。

深く深呼吸して、緊張を抑えた。

仕掛けるときが来たのだ。遂に。

このことがバレたら、私は『赤き星』から、スパイだということを知られる上に。

折角コネを作って入った、学生会からも追われかねない。

それどころか、苦労して編入学した、大学からも追放されかねない。

それだけのことを、これから仕掛けようとしている。

そりゃあ、緊張するに決まっている。

私はルレイアやルリシヤみたいに、いつも堂々と振る舞えるタイプじゃないから。

つい、緊張してしぼんでしまいそうになるけれど。

今は、そんな弱気を見せている場合じゃない。

アイズが、私を信じて、この任務を任せてくれたのだ。

ならば私は、その思いに応える。

これが成功すれば、皆を助けることに繋がる。

箱庭帝国に亡命を余儀なくされているルーチェスだって、帰ってこられるのだ。

家族の為に、私は出来る努力を惜しまない。

だから。

私はルレイアの姿を思い出し、毅然と胸を張って、『赤き星』の部室を訪ねた。

「…失礼します!」

軽くノックをしただけで、返事も待たずに、私は部室の扉を開けて中に入った。