The previous night of the world revolution6~T.D.~

「…何なんだ、お願いって」

「『帝国の光』、って聞いたことあるかな」

「…!」

…『帝国の光』。

近頃、表社会のみならず、裏社会でも、時折その名前を聞く。

聞いたところによると、そいつらは、ルティス帝国を共産主義国家にしようと、若者を中心に活動している。

少し前、世間を騒がせた『天の光教』の後継組織…。

俺は、瞬時に理解した。

そうか。

あんたらが敵に回してるのは、そういう連中なのか。

だが。

「…聞いたことはあるな」

それだけ言って、俺はそれ以上の詮索はしなかった。

これ以上は、たかが武器商人である『オプスキュリテ』の管轄外だ。

余計な詮索は、死を招く。

俺が相手にしている『青薔薇連合会』というマフィアは、そういう連中だ。

「君が賢くて助かるよ」

相変わらずの笑顔で応える、次期首領。

馬鹿野郎。

こっちだって、今、命懸けの綱渡りしてるんだからな。

言葉を間違えれば、生きてこの建物を出られるかどうか。

「それで、お願いなんだけど」

「…何だ?」

「もし、『帝国の光』、及びその系列組織から、武器の斡旋を頼まれたとしても…断って欲しい」

「…」

…これは。

明らかに、余計なお世話だ。

俺は商売人だ。客を選ぶ自由がある。

一人の客が、別の客を指差して、「あいつには売らないでよ」と言ったところで。

そんなの、客が決めることじゃない。店側である、俺が決めることだ。

だからあくまで次期首領様は、「お願い」だと言っているのだ。

俺達が誰を相手に商売するか、指図することは出来ないから。

それでも、敢えて口を出してくる。

その意味が、理由が何なのか。

簡単だ。

これは、脅しだ。

だから、『青薔薇連合会』との取引は肝が冷えるんだよ。

頷かなきゃ、それこそ緊急脱出案件じゃねぇか。

これで、俺が本当に『帝国の光』とやらに武器を売るようなことがあれば。

今後、『オプスキュリテ』は枕を高くして寝ることは出来ない。

『青薔薇連合会』を裏切り、彼らを敵に回す行為だからだ。

さすが、人を脅迫することにおいては、右に並ぶ者はいないな。

恐れ入るよ。

…とはいえ。

「…安心しろよ」

わざわざ、そんな恐ろしい脅しを仕掛けてこなくても。

「俺だって、ルティス帝国の共産主義化なんて御免だ。商売の邪魔にしかならないからな」

「…そう、それなら安心だね」

あぁ、安心してくれ。

あんたが安心してくれなきゃ、俺が安心して帰れないんだよ。

全く、つくづく『青薔薇連合会』と関わっていたら。

命がいくつあっても、足りやしない。