The previous night of the world revolution6~T.D.~

「一つずつ聞こうか」

「あぁ、まずは引っ越して欲しい」

それは有り難い。

本気で、「ありがとう」って言いそうになった。

俺はようやく、あの家具家電監視付きのアパートから抜けられるのか。

だが、俺はあくまで首を傾げてみせる。

「引っ越し?」

「あぁ。引っ越しって言っても、部屋を移動して欲しいだけだ」

…成程、理解した。

「今だから言うけど、あのアパートは、監視付きのアパートだったんだ」

知ってる。

初日から知ってる。

「えっ…」

しかし、俺は驚いた振りをしてみせる。

「部屋の中にも監視カメラや盗聴器があるし、同じアパートに暮らしてる住人達にも、君を監視するように頼んであったんだ」

だろうな。

初日から気づいてる。

「…何でそんなこと…」

しかし、俺はあくまで、寝耳に水の反応をする。

「ごめんな」

人様を24時間監視しておきながら、ごめんなの一言で済ませるとは。

全くけしからん。

え?お前もルルシー先輩の部屋に、あれこれ仕掛けてるだろって?

あれは良い。誰が許さなくても、俺の仮面が許すから。

ルレイア先輩も喜んでるしな。

後輩からの、可愛いプレゼントみたいなものだ。

普通の人なら、激高してもおかしくないところだが。

そんなことしてたら、折角開きかけたヒイラの信用を失いかねないので。

「どうして…そこまで…」

寛大な反応をしてみせる。

普通は怒ると思うぞ。

「それだけ、君に期待してたってことなんだ。そう思ってくれないか?」

思わないだろ。

「君を信用したかった。君を信用する証拠が欲しかった。だから、君を見張ったんだ。悪かったと思ってる」

「…」

「気を悪くしないでくれ。あれも、通過儀礼の一環だったんだ。この地下を見ることが出来る党員は、皆似たような処遇を受けてる」

だから、監視をつけられたことも光栄に思え、と?

そりゃ確かに、光栄なことだな。

「…分かってる。気にしなくて良い」

俺は、言い訳と言う名の謝罪を繰り返すヒイラに、優しくそう言った。

内心「何言ってんだこの馬鹿」と思っていたが。

それは、仮面の下に隠しておいた。

ヒイラとの関係を、悪くする訳にはいかない。

経緯はどうあれ、ようやくヒイラが俺を信用しようとしてくれているのだから。

そこに水を差してはならない。

「それで…今度は、俺が監視する側になれば良いんだな?」

「…あぁ、そうなる。また今度、新しい党員が入居する予定だから…」

「そうか。そういうことなら、協力するよ」

「…ありがとう」

ついさっきまで監視されていた者が、今度は別の人間を監視する側に回るとは。

なんという皮肉だ。

ともあれ、監視がなくなるのは良いことだ。

随分やりやすくなるだろう。

どうせなら、あのアパートそのものから出して欲しかったんだがな。

かと言って、「じゃあこの建物に住み込みで」と言われたら、それはそれで絶対に嫌なので。

別の部屋に移動させられるだけでも、まだマシか。

「じゃあ、二つ目にやって欲しいことっていうのは?」

「あぁ…。それなんだけど、同志ルニキスは、ホストクラブでバイトしてるって言ってたよな」

「あぁ、そうだが」

ルレイア先輩のホストクラブだな。

「あのバイト、やめてきて欲しい。今、すぐに」

「…」

…これまた、手前勝手な注文が来たぞ。