The previous night of the world revolution6~T.D.~

そう言うと、ヒイラは打って変わって、明るい笑顔になった。

「さすがだよ。やっぱりお前は、スパイでも何でもなかった。ちゃんと、俺達『帝国の光』の仲間なんだ」

「当たり前だろう」

そういう風に見えるように、俺がどれだけ苦労していると思う。

「これは一体、何の儀式だ?」

「ごめんごめん。いや、俺は君を疑ったことなんて、一度もなかったんだけどさ」

嘘をつくな。

疑いまくりだったじゃないか。

今までも、ついさっきも。

「でも、これからここの地下を見せる為には、必要な通過儀礼だったんだ」

通過儀礼。

やはり、そういうことか。

さっきの「スパイなんだろう?」という問い掛けは、鎌をかけていただけだったんだ。

危うく動揺していたら、本当に拷問室送りだったな。

そんなヘマをする俺ではないが。

残念だったな。俺を吐かせたいなら、中世から近代までの、古今東西全ての拷問道具を一ダース用意するところから始めることだ。

それでも、吐くつもりはないが。

仲間を売るくらいなら、舌を噛んだ方がマシだ。

「君なら大丈夫だな。ごめんな、疑うようなことを言って」

「いや…。それは別に良いが…」

そんな下らない小細工を使ってまで。

俺に一体、何を見せたいんだ?

俺達が向かう地下に、一体何がある?

「俺は一体、何を見せられるんだ?」

「大丈夫だ。これからの俺達に、必要なものだよ」

これからの俺達に、必要なもの。

それって…。

静かな音を立てて、エレベーターが目的地に辿り着いた。

エレベーターが開いた先には、暗い空間が広がっていた。

そして俺は、嗅いだ覚えのある匂いを感じた。

…火薬の匂いだ。

これは、もしかして…。

「さぁ、こっちだ。見せたいものがあるって言ったろ?」

「…」

ヒイラに導かれ、向かった先。

「俺だ。同志ルニキスを連れてきたから、見せてやってくれ」

ヒイラが、地下にいた同志の一人に、明るくそう言った。

こいつは、俺よりも先に、ヒイラの信用を得ていた人物ってことか。

軽く頷いた同志は、壁に手を伸ばし、何かのスイッチを入れた。

真っ暗だった空間が、明るく照らされた。

そして、俺は次の瞬間、今度こそ、驚く羽目になった。

いや、驚いたって言っても、ある程度予測はしていたのだが。

少なくとも、さっき「スパイだろ?」と言われたときよりは、驚いた。

何に驚いたのか。

広い物置のような空間に、泰然と鎮座していたブツの数々に、である。