「じゃ、俺先に出るんで」

「はい。俺も後から行きます」

俺は、ルーシッドを残して先にマンションを出た。

同時に家を出たりして、俺がルーシッドと一緒にいるところを、誰かに見られたりしたら。

俺の完璧な演技が、台無しになってしまうからな。

今や、『ルティス帝国を考える会』の敵と成り果てたルーシッドと、一緒にいるところを見られるのは不味い。

あくまでルーシッドは、『ルティス帝国を考える会』の嫌われ者、鼻つまみ者でなければならないのだ。

ざまぁ。

今となっては、ルーシッドは公然とした、『ルティス帝国を考える会』の嫌われ者。

今でも、ルーシッドは負けじとサークル活動に参加し。

積極的に、発言も続けているが。

今となっては、ルーシッドが何を言おうとも。

「あーはいはいお前の意見は別にどうでも良いから」と、軽く流されている。

相手にすらされていない。

一部のサークルメンバーからは、完全に存在をスルーされている始末。

ざまぁ。

で、それは良いとして。

ルーシッドがいくら嫌われようが構わないが、それより今日のイベント。

俺が、これから向かう場所は。

「あ、来た来た。おーい!ルナニア」

待ち合わせ場所になっている駅に辿り着くと。

エリアスと愉快なABCの仲間達が、俺に手を振った。

「おはよう、ルナニア」

「おはよー」

「おはようございます」

俺は、にっこりと「業務用」の笑顔を浮かべた。

エリアスも、愉快な三人の仲間達も、全く疑うことなく俺に挨拶してきた。

見てみろ。俺と、このルーシッドの差。

いやぁ人気者は困りますねぇ。

「皆さん早いですね。もうほとんど揃ってるじゃないですか」

「だよな。俺達が来たときも、上級生の人達はほとんど集まってたよ」

と、モブB。

ふーん、上級生ねぇ。

『ルティス帝国を考える会』会長、エリミア・フランクッシュは、改札付近に屯して、側近のメンバー達と何やら喋っていた。

改札付近で立ち止まるな。

すると。

「…おはようございます」

遅れ馳せながら、俺の後に出てきたルーシッドが、駅に到着した。

あぁ、お前いたんだっけ。

「…」

「…」

折角ルーシッドが挨拶したのに、彼に挨拶を返す者は、誰一人いなかった。

ほとんどの者は、ルーシッドをチラリと一瞥しただけ。

あとの者は、まるでルーシッドの声が聞こえなかったかのように、友達とお喋りを続けたり、スマートフォンを弄ったり。

誰一人、ルーシッドを顧みる者はいなかった。

俺も、エリアス達も。

…ざまぁ。