The previous night of the world revolution6~T.D.~

さて。

実況者の俺としては、大変面白い展開になって参りました。

「今のルティス帝国が良いと、本気でそう思ってるの?」

「良い…とまでは。でも、最善ではありませんか?」

「一部の国民が貧困に喘ぎ、今日明日を生きていくのも精一杯な現状がそこにあるのに、それは見ない振り?」

軽蔑したような眼差しを向ける、エリミア会長。

対するルーシッドは、毅然として答えた。

「確かに…。全ての国民を救うことが出来たなら、その方法があるなら…それが理想だと思います。…でも」

「でも?」

「それはあくまでも、理想です。どんなに大きく両手を広げても、溢れ落ちるものはある。どんなに偉大な正義を行おうとしても…」

…へぇ。

エリミア会長より、俺の方が感心させられた。

その言葉が演技じゃないなら、お前も成長したな。

昔は、馬鹿の一つ覚えみたいに、正義正義言ってたのに。

正義だけでは人を救えないと、ようやく分かったか。

俺は、自分の不出来な後釜の、ちょっとした成長に感心していたが。

エリミア会長は、ますますルーシッドへの嫌悪を深めただけのようで。

「…ルーカス君はきっと、かなり裕福な家に生まれたんだね」

「…そんなことはないと思いますが」

嘘つけ。

スヴェトラーナ家と言えば、ウィスタリア家と並ぶほどの名家だろう。

だが、今はそれは内緒である。

「少なくとも、生活に困るということはありませんでした」

「やっぱり」

「失礼ながら…会長は、生活に不自由された経験がお有りなんですか?」

「ないよ。私も、不自由なく育った」

ないんかい。

まぁ、ルティス帝国総合大学に合格してる時点で、お察しだよな。

それなりの教育を受けたから、それなりの教育を受けられるだけの経済力があるから、ここにいるのだ。

何で医者の子供が医者になるか、知ってるか?

まず、医学部に入れるほど裕福じゃなきゃ、医者になるという夢すら抱けないからだ。

親の経済力と、子供の学力は相関している。

つまりエリミア会長も、それなりに裕福な生まれってこと。

ならば、お前に貧困者の気持ちを語る権利はないぞ。

お互い、貧困者の気持ちを語る権利がない者同士が、貧困者の気持ちを巡って言い争おうとしている。

こんな滑稽な議論があるか?

本物の貧困者にとっては、そんな話し合いどうでも良いから、小銭の数枚でも恵んでくれよ、って感じだろうな。

「お前らの話なんて、腹の足しにもならねぇよ!」って、アリューシャなら言いそう。

そして、実際その通りだ。

エアコンの効いた部屋で、温かい飲み物を前に、ルティス帝国総合大学なんて立派な建物の中で、「貧しい人々の気持ちが…」と話し合うなんて。

こんなに滑稽なことはない。

まず、話し合いの拠点を、スラム街に変えるところから始めようか。