The previous night of the world revolution6~T.D.~

『あのルーカス・トラーナっていう学生、なんか変わってるよな』

講義室に残っていた上級生の一人が、ポツリとそう言った。

それを皮切りに、我も我もとルーシッドの悪口大会が始まった。

『そうね。私も気になってたわ』

『初日からあんな感じでしたもんね。王制や帝国騎士団を擁護して…』

『何であんな考えになるのか、理解出来ないよ』

おー、言われてる言われてる。

聞きながら、思わず顔がにやけてしまいそうになる。

『旧世代の考えに、未だに囚われてるのよ。案外、田舎の出身なんじゃないかしら』

田舎者呼ばわり。

残念、スヴェトラーナ家は、帝都一等地に居を構えております。

『本当、調子狂うよな、あの新入生…』

『空気が読めてないって言うか…』

『考え方が幼いんじゃないですか?』

言いたい放題の上級生会員達。

ルーシッドが、批判の矢面に立たされることは分かっていた。

そうなるよう仕向けているのだから、当然だ。

故に、ルーシッドがどんな悪口を言われていようと、そんなことはどうでも良い。

まぁ、小気味良いとは思うけどな。

それよりも。

「…」

俺は、PCに繋いである監視カメラの映像を、無言で見つめていた。

ルーシッドの悪口大会が開催されている、その場に。

いるのだ。

会長が。エリミア・フランクッシュが。

それが何より重要なことだ。

彼女は、ルーシッドに向けられる悪口の数々を、その場で一緒に聞いている。

聞いていながら、彼女はルーシッドに悪口を言う会員達を、止めようともしなかった。

誰にも発言権があり、誰の意見も尊重される会を代表する人物が。

一人異端な意見を持つルーシッドに対して、これほどの陰口を叩かれているのを聞いていながら。

彼女は彼らを止めようともせず、まるでその通りだとでも言うように、聞き流していた。

つまり、そういうことなのだ。

エリミア会長もまた、ルーシッドを異端者だと考えているのだ。

…平等主義が、聞いて呆れるな。

あの女も所詮、外面は綺麗に取り繕っているが。

根の部分は、共産主義に染まった、現体制反対派の人間なのだ。



…すると。

不意に、ルーシッドの悪口でもない、ルトリアさんの歌声でもない、部屋の扉をノックする音が、室内に響いた。