The previous night of the world revolution6~T.D.~

帝国騎士団の隊長、副隊長等の上の人になるには、明晰な頭脳と、優れた剣の腕が必要な訳だが。

え?剣なんて時代錯誤だって?

仕方ない。一応帝国「騎士」だからな。その名残なんじゃないの。

で、このアホなサークルメンバー達は、帝国騎士団の上の人が、貴族だけで占められているのが気に入らないらしいが。

帝国騎士団の隊長達が貴族出身なのは、当たり前のことなのだ。

だって彼らは、帝国騎士団の上の人になる為に、この世に生まれてきたのだから。

意味、分かるか?

一般人と違って、彼らには職業選択の自由というものがない。

帝国騎士団で上の人になっている人間は、大抵が貴族の名家出身であることが多い。

それは、その家が代々、帝国騎士団で上の人を務める家系だから。

その家に生まれた限り、帝国騎士団で隊長をやることを、生まれた瞬間から決められているのだ。

俺もそうだった。

何なら、ルリシヤの実家もそうだ。

ウィスタリア家もクレマティス家も、代々帝国騎士を輩出する名門貴族として、ルティス帝国に名を馳せてきた。

他の隊長達の実家も、似たようなものだ。

ルーシッドの実家、スヴェトラーナ家もそう。

彼らは、その家に生まれた時点で、帝国騎士団の隊長になることを強制されてきた。

だから、生まれたときから、徹底した英才教育を叩き込まれる。

それこそ、物心がつくかつかないかの頃から、木剣を握らされ。

同時に、喋り始める前から、専属の家庭教師によって、様々な知識を詰め込まれる。

一般人の子供が、玩具やお絵描きに夢中になっている間。

貴族の子供は、血を吐くような努力をして剣を振り、頭に知識を叩き込まれていたのだ。

そして、こう言われる。

「お前は将来帝国騎士団に入る。そして、帝国騎士団で隊長になるのだ。それが出来なければ、お前の命には何の価値もない」と。

毎日毎時間、呪いのように、魂に刻み込まれるように、言われ続けるのだ。

すっかりマフィアの黒に染まったつもりの、俺の中にも…未だに残っている。

幼い頃から、自分の名前を覚えるより前から言われ続けてきた、呪詛のような言葉。

「帝国騎士団で隊長になれないなら、お前には何の価値もないのだ」って。

時折思い出しては、背徳感に駆られる。

あれは、最早洗脳だ。

代々帝国騎士団で隊長を輩出する、貴族の子供達は、皆そうやって育てられる。

一般人の子供が、遊んだり、幼稚園に行ったり、昼寝したりしてる間。

彼らは、自分の存在意義を懸けて、戦っている。

だって、洗脳されているのだから。

帝国騎士団で隊長に…最低でも副隊長以上にならなければ、家の名前に傷をつける。

それどころか、自分の存在意義さえ、なくなってしまうのだ。

「お前には生きている価値がない」と言われること以上に、恐ろしいことがあるか?

少なくとも貴族の子供達は、本能的にその恐怖に怯え、だから死に物狂いで、毎日鍛錬する。

知識を詰め込み、剣の腕を磨き、帝国騎士官学校への入学を目指す。

そこで六年間、これまたおぞましい「洗脳」を受ければ。

ようやく、立派な帝国騎士が出来上がる。